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昼休み

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これは俺の自論だ。
 年齢、性別、職業、性格、容姿などといったもののうちの一つだけで俺は人間を判断しない。
 たとえ、容姿が美しくても、性格がひどければ俺はそんな人とは付き合えないだろう。逆に、太っている人が肥満を改善しようとする努力をしなければ、俺はその人とは付き合えないだろう。
 まあ、これは極端な例だ。別にデブでも良い奴ってのはいる。それにここで言うデブは生死に関わるレベルの話だ。性格については俺も偉そうなことは言えないから、当然、完璧な性格を求めてるわけでもない。
 あくまで、総合的に、男だから、女だからではなく、人格を、容姿を、総合し一つにして判断する。
 だが、この自論には穴があった。いや、普通はたどり着かないはずの結論だ。
 この付き合うというのは、恋人になるという意味ではない。いわば、友情の境界線というものだ。だが、友情も高ずれば恋となるのだった。
 若い俺はそれを理解してなかった。
 性を来にせず、個人で見るということは……。
 ――男でもいい。
 ということだったのだ。



 ――昼休み
「北本くん。隣、いいかな?」
「おうおう、いいぜ」
 俺の名前は、北本尊。そして、今、ちょうど隣の席に座って弁当を広げているのが、一ヶ月前に転入してきた新田光。
 新田はシャイボーイだ。体型はそんな性格に見合う華奢な体だ。肉つきがそれほど良くないので、同じ高校2年生には見えない。身長は俺の肩ぐらい。だいたい、155ってところか。
 髪の毛はもちろん、黒で、あまりクセがない。少々ハネている。長さは首の中頃ぐらい。顔はなかなか中世的だ。本人曰く、クォーターだからかも、らしい。
「北本くん。今日も焼きそばパンなの?」
「まあな。俺んちは現金支給なんだよ」
「高校生なんだから。もっと食べないと体に毒だよ」
「……その言葉、そっくりそのまま返す」
 俺んちには母親がいない。親父と二人暮らしだ。仕事で忙しい親父はまともに俺の面倒を見れない。その代わりといっちゃなんだが、たんまりと金をくれる。
「ほれ、お前の弁当、相変わらずそこらへんの女子のにそっくりですくねえじゃねえか」
「僕は、見ての通り華奢だからあんまり胃に入らないんだ」
「その身長だとなめられっぞ」
「あはは……」
 苦笑する新田を横目に、俺は2個目の焼きそばパンを机の中から取り出した。
「うわぁ……。机の中に入れておいたんだね……」
「あと3個は入ってる。食う量だったら何も問題ないな」
「そ、そうだな。それはそうとさ――」
 次に自分の食う量のことを問題にされるであろうことを予想した新田は話題を変えようとした。
 ――させねえよ。
「俺の食う量は問題ないから、次はお前がなんとか解決する番だよな」
「い、いや。ほら! それだと栄養偏ってると思うよ。パンと焼きそばって炭水化物と炭水化物じゃん。だから……。うん、解決してない」
 にっこり。だが、俺は退かない。
「あ? 腹が膨れればいいだろ」
「ダメだよ!」
 ちょっと強めに言われた。
「その……、作ろうか?」
 頬をりんごのように紅く染めながら、新田はもじもじし始めた。
 嫌な予感がする。コイツと友達になって一ヶ月だが、嫌な予感がする。
「……何を?」
 一応、聞く。
「き、北本くんにお弁当」
「バカ! 声が無駄にでけぇよ」
 新田はテンパったせいか、少し大きめの声で言ってしまった。それでも、おそらくクラス中には聞こえただろうな。
 その証拠に、ざわざわしていたクラスが一瞬で静まり返ったから。
「北本くん……。また、新田くんとホモってるよ」
 グサ!
 的確(かもしれない)な女子Aの言葉が胸に刺さる。
「転入初日の新田くんにはじめに声をかけたのも、北本だったもんね」
 と、女子B。話すタイミングなんてどうでもいいじゃねえかよ。
「やっぱり気があるんだよ……」
 トドメに女子C。いや、その発想はおかしいですって。
 さらにその周りの女子たちがざわざわしはじめた。ヤバイ。
「ゆ、友情をホモ扱いすんじゃねえ!」
 故に一喝入れておく。これは俺の印象に深くかかわるからな。
 ……彼女できたことないのに、さきに彼氏とか罰ゲームだろ、マジで。
「ねぇ、北本くん」
「ん?」
「どうかな? 僕のお弁当?」
「いやぁ、俺、金は親父からたんまりもらってるからさ。飯ぐらいはなんとでもなっからいいよ」
「それじゃあさ、僕が北本くんから材料費を貰えば解決じゃないかな?」
「いや、そもそも……」
 いらない。そう言おうかと思ったとき、俺は新田がちょっとだけ目を赤くしていることに気づいた。
 これは新田の泣く前兆なのだ……。
「ダメ、かな?」
 ああ、コイツ。俺に提案を断られそうなだけで泣きそうになってる! 俺に拒否られただけで傷ついちゃってるよ!
「……分かった。1日あたり何円だ?」
 仕方ないけど、まあ、弁当も悪くないだろうよ。
「んーっと、300円も貰えればいいかな?」
「安! そんな安くていいのか? 赤字にならねえのか?」
「だいたい余り物と冷凍食品だから大丈夫だよ」
 でも、コイツには作ってきてもらうわけだしな……。
「じゃあ、500円だす」
「え、そんな……」
「いいんだよ。俺は今まで昼食に毎日500円使ってんだから、何も悪いことじゃねえ。それに手間代みたいなもんだ」
 それに人の手作り弁当は市販の大量生産品と比べて、やっぱりうまいからな。
「わかったか?」
「うん」
 俺は新田の肩を叩いた。
「商談、成立だな」
 そこでまた、女子Aが言った。
「男同士で、手作り弁当……」
「キャ~!」
 こうして女子たちはまた、その機関車のようにうるさい会談の燃料を得たのだった。



「ふぅ……」
 便所で小便をしながら、俺はこの1ヶ月を軽く振り返ってみた。
 新田が転入してきた日、まっさきに声をかけたのは俺だ。
『一緒に、飯食わねえか?』
 そこから、何故か俺にはホモ疑惑が浮上した。いや、正確には俺と新田の間だけで。確かに、あの時の新田の顔は真っ赤だったが、転入初日に飯に誘われたらテンパッてああなるだろうよ。
 新田光が前の学校でいじめられたのを知ったのは、それから1週間後だった。
「色々あったな……」
 小便を終えて、窓に近寄った。そして、俺は窓の縁に顎を乗せて外の景色を眺めた。
「北本、相変わらず、お前ホモホモしいな」
「謎の形容詞で俺を形容しないでくれたまえ」
便所にもう一人、男が入ってきた。幼馴染の高坂康だ。
「仕方ないだろ。今、お前ら2人が女子の間でブームなんだぜ」
「どんなだよ」
「いいか――」
 高坂は俺の肩に手をおいた。なので、俺は高坂の顔を見て、その話を聞いてやることにした。
「北本✕新田」
「は?」
「北本✕新田」
「いや、は? え、は?」
「なにやら攻めと受けらしいぞ」
 攻めと受け?
「普通、攻めに対応するのは守りじゃないのか?」
 おかしいだろ、日本語的に。
「まあ、俺も詳しくは分からんし、分かりたくもないが、これは****の立場らしい」
「****っ!?」
「そう、****だ」
 どこか自慢気な高坂。
「おまいさんはそんな話をしにわざわざ俺を追いかけたのか?」
「まあな」
作品名:昼休み 作家名:よっち