涙
昨日はは隣のクラスの男子と喧嘩をして、悔しくて泣いてしまった。
今日は16歳の誕生日でみんながお祝いをしてくれて、喜んで泣いてしまった。
明日はどんな涙を流すのだろうか・・・
「もう寝ようかな」
人は悲しくても、嬉しくても泣く生き物だ。
だったら生まれてから死ぬまで、どっちの方が多いのかな。
悲しくて泣くのと、嬉しくて泣くのでは。
そんな疑問が頭の中をグルグル駆けめぐって、私は布団から飛び起きた。
「・・・・」
再び寝ることにした。
犬。
私の愛するペットのメルト。
彼女が初めて子どもを産んだとき、私は泣いた。
それは嬉しくて、泣いたんだ。
私の愛するペットのメルト。
彼女がある日病気で死んでしまったとき、私は泣いた。
それは悲しくて、泣いたんだ。
彼女のことを思い出す度に私は涙がこみ上げ、時には号泣した。
悲しみの先にある感情を私は感じたんだ。
彼氏。
私の愛する彼氏のケンジ。
ずっと憧れだった彼に告白されたとき、私は泣いた。
それは嬉しくて、泣いたんだ。
私の愛する彼氏のケンジ。
ずっと愛していた彼が去っていったとき、私は泣いた。
それは悲しくて、泣いたんだ。
私のお腹に命が宿ったと知ったとき、私は涙がこみ上げた。
ずっと私は彼の赤ちゃんが欲しかったから、複雑ながらも結局は嬉し泣きをした。
私は気がついた。
悲しみと嬉しさは波のように押しては引いていくものだと。
その度に心が動かされ涙が出ることを。
心、それすなわち、涙の源泉であることを。
私は長くも短い人生で、あと何回涙を流せるのだろうか・・・
私は目が覚めた。
「ねぇ、おばあちゃん何で泣いてるの?」
5歳になる孫が私の顔をのぞき込む。
「なに、ちょっとね、昔の夢を見ていたのさ」
END