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舞台裏の仲間たち 8~9

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 背中を押していた手が、急に重くなりました。
茜が、砂浜のはずれで棒立ちになってしまったせいでした。
どうしたの、と声をかけると今度は顔をうつむけてしまいました。
ぐるぐる巻きをしたマフラーの隙間からは
強風にあおられて、好き勝手に乱れる茜の黒髪しか見えません。



 やがて、潤んだ茜の両眼が
やっとの想いで私の顔を見上げてきました。

 「もう少しだけ、海を見ていても良い?
 迷惑ばっかりかけるけど、
 もうすこしだけ、私に付き合って。」


 「いいよ。
 そのかわり、風邪だけは引くなよ。」


 「ならさぁ・・・
 しっかりと、私を温めて。」


 大海原へと身体の向きをかえた茜を
その背後から、抱きしめる形になってしまいました。
もう一度マフラーを巻き直してやるために、
はだけかけたいた上着の襟を整えていると
茜の冷たい指先が、
私の両指に触れてきました。
そのまま茜に捕まって、冷たい耳たぶにまで
誘導をされてしまいました。


 包み込むようにして、両耳を覆ってあげました。
温かい・・・と、茜がその上にさらにしっかりと自分の指を重ねます。
茜が満足そうに両眼を閉じると、
またゆっくりと、すべての体重をかけて私の胸に
満足そうにもたれかかってきました。




 ■九十九里浜(くじゅうくりはま)は、
 千葉県房総半島東岸にある、刑部岬と太東崎の間の太平洋に面している、
 全長約66キロメートルの海岸のことです。
 日本の白砂青松100選と、日本の渚百選にも選定されています。

(10)へつづく