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横浜

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偽者の街の話をしよう。

私の知る限り、世界で最も俗悪で、厚顔無恥で、嘘つきで無知で見栄っ張りな街。
糞に糞を加えて、こねて、練り上げ、最後に過剰なバラの香りを含ませた俗っぽい香水をひと吹きして出来た代物。
あらゆる人々の罪悪を吸い上げ、邪悪で無能なマーケッター達がこしらえた懺悔の塔。
恥の概念そのものである空間と、脳をパラレルワールドに置き去った無自覚な住民。
ああ、神よ。愚かで純朴な人間どもを許したまえ。アーメン。

大通りには、そこかしこにうごめく夢遊病患者。
家畜の餌を食らう餓鬼。
神妙な顔つきで粗悪なインテリアを愛でる。
作られた自然。捏造された歴史。
組織的な団結力を以て美しさの対極へと突き進む運動。

君等は、心臓が鼓動を打つたびに機会を与えられている。
糞に埋もれて生き永らえるか、死ぬかだ。
大抵は、糞を心地よい液体か何かと生涯勘違いしたまま埋もれ、沈んでいく。
死体は栄養の豊富な糞に生まれ変わり、上塗りされていく。街は強化される。

君等は、死を選ぶべきだ。俗悪なショーの中で死ぬべきだ。
三流のピエロのように、使い古されたネタで失笑を買い、客に媚び、おどけて死ね。
それが実際、この街で過ごした者の、最高の最期なんだよ。
この街はそこまで来てるんだよ。ただ死ぬだけじゃとても償えない。
媚びへつらって、家畜に成り下がって、鞭で打ちのめされて、獣のように悶えながら死ぬんだよ。
あらゆる権利はないよ。君等はあまりにも大きな罪を犯したから。
償おうなんて間の抜けたことは考えないほうが良い。蟻が世界を救えるか?

もう全ては取り返しがつかない。嘘をつきすぎた。偽りを重ねすぎた。
何に向かっているかすらわからない。醜態への暴走。

今日も一段と臭う、港町横浜。
作品名:横浜 作家名:木村太樹