ある戦(いくさ)の顛末
この家で初めてゴキブリと対面。いや見つめ合ってはいない。
引っ越してきて今年は二度目の夏。
昨年は、蜘蛛がよく出た。築年数からすれば考えられなくもない。
もちろん入居の際には、害虫駆除の業者も入って水まわりや床、押入れなど
考えられるところは消毒したのだが、蜘蛛のほうがきっと長く住んでいたことだろう。
蜘蛛には何度か、冊子に受け止めては外へとお帰りいただいた。
『朝蜘蛛は……』と殺生に関して聞いたことがあるが、我が家の鉄則?は
『無駄な殺生はしない』が基本だ。
蚊も少ない。もし刺されたとすれば、他所から連れてきたのでは?と考えるくらい
見かけない。ありがたい。
だが、こばえの類は、生ゴミのショウジョウバエ、すばしっこい動きのノミバエ、
浴室に現れるチョウバエと見かける。
こうまで書くと、害虫屋敷のように思われそうだが、まあ実際にそれに大きくかけ離れ
てはないだろう。
いや話は、そこらの害虫ではない。
今回の主役たるは、あの艶やかにして進化の跡を見せない
――シャコタン流線型の美しいフォルム――
――スピード感のある足さばき――
――床、壁、自在に這い上がるハイテクな足回りの仕様――
そして、憎たらしく、何度も視野に現れる。
(捕まえてみれば!)と言わんばかりに。
だが、ヤツに対しては、鉄則など不要だ。
『ヤツを見かけたら一発殺生!敵は隙間まで追いかけるべし!』が厳重な約束。
狙うは、ヤツが後ろを向いた時だ。
手前に向かってくる時、多少気味悪く、おっかないので怯んでしまうが、
勇気を出して新聞紙の武器(作り方*約一日分を二つ折りまではされているので
もう半分に折り、それを三等分もしくは四等分に折る。三等分くらいが初心者には
叩く面が広く有効!)でちょいと脅す。
ヤツが方向を変え後ろ向きになったら良いが、横に逃げた場合は仕切りなおし。
あくまでも後ろ向きが触覚や視野(見えてるのか?)を考えても仕留め易い。
温情は不要!!
止まっているときは、多方面に動く可能性があるため、一歩踏み出したときがチャンス。
今回、洗面所入り口辺りで仕留めたヤツは、体長四センチ五ミリ。
踏み出した足形のまま床にて撃沈!
――やったぁ――
トイレよりトイレ専用紙約一回分にて処理。速やかに便器内にて流水。
その後、消毒液にて床掃除。
一件落着!花吹雪および片肩をはだけても入れ物はない。
あ、誤解なく。お見苦しい想像はしなくても大丈夫。出していませんから。
ヤツが現れたということは、仲間がいるとも考えられるので警戒態勢が必要か?
だが、ダンゴ類やホイホイを設置すると、誘引するようで気味が悪い。
出たとこ勝負で勝利あるのみ。
ただし!我が家は害虫屋敷ではない。
その点は、大きな声で申し上げます。
はあぁぁぁ・・・。おつかれさま。
― 終結 ―
作品名:ある戦(いくさ)の顛末 作家名:甜茶