舞台裏の仲間たち 4~5
「ねぇ、ここが終わったらつき合ってくれる?。」
一つ違いですから、もう29歳のはずです。
10年前は、小柄な「そばかす美人」でしたが、
クリクリとして愛らしく見つめる両眼は、当時の面影そのままでした。
劇団で活躍していた頃は、ほとんどノーメイクで通していましたが、
このシャネルのNo.5だけが、彼女の歩いた後に、
かすかに香っていた記憶が残っています。
「おう、構わないけど、
いいのかな?
旦那や、子供たちは?」
「大晦日だというのに出歩いて
元日になるというのに、付き合えなんて言う女に、
何で、家庭があると思う訳?。
そう言うあんたは、まだ、独身のままでしょう。
まだ永遠のマドンナに、
(時絵に)首ったけなわけ?。」
「ん…」
「初詣に行こうよ。
12時頃になったら、こっそりとここを抜け出しましょう。
先に約束を取り付けておかないと、
あんた、・・・絶対に呑みすぎるもんね。
きっとだよ、約束ね。」
そう言うなり茜が、いきなり首筋へ唇を押しつけてきました。
抵抗する一瞬さえもありません。
甘い香りを私の首の周辺に、たっぷりと漂わせてから、
私の右腕を勢いよく抱え込み、そのまま元気に
再会のドアを開け放ちました。
「時絵ママ~、元気。
一番乗りのカップルが、やってきましたぁ!。」
作品名:舞台裏の仲間たち 4~5 作家名:落合順平