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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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今日はいつ来れるの?

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私は、いま、健ちゃんを待っている。
共同部屋、四人部屋の病室で。
昼御飯が済み、いまから面会時間。七時間しかないから、ちょっと悲しくて、物足りない。
私はケータイをカコカコと早打ちして、健ちゃんに送った。
『今日はいつ来れるの?』
健ちゃんは学校があるから、来る時間がそもそも遅い。
そして返信にはこう書かれる。
『ごめん。今日、塾。』
分かりきっていることだ。
前に、『塾だから来れるか分からない』と言われていた。
だから、こういう返事は分かりきっている。だけど、送らずにはいられない。
聞かずにはいられない。
だって、前、一回だけ見舞いに来てくれたんだもの。
『塾じゃなかったの?』
私は皮肉とかじゃなく純粋に疑問だった。
『サボったの。親に怒られちゃった。』
どうして、なんて聞けなかった。
良いように私は考えた。
でも、そのサボってきたとき、私はたまたま風呂だった。
面会時間より前に入りたかったのに、強制的な時間編成だから、仕方ない。
風呂にも入らないで会うほうが嫌だったから入って、あがったら、手紙と一緒にゼリーが2つ。
【顔だけでも、と思ったけど、風呂中でした。用事があるので帰ります】
そのメモはいまも後生大事にとってある。
その一回だけが来てくれたときだった。
もう一回、にすがり、私はなんとか捻り出す話題と共に同じ問いを投げ掛ける。
いつも話題の感想とお決まりの答えが返ってくるばかりだった。
そして、消灯時間が過ぎ、一時間。
健ちゃんが家に帰りつく時間だ。
またメールを立ち上げ、彼の言葉を待つ。
でも、本当は直で言いたい。話したい。笑いたい。
それは叶わないのかなあ。
なんて悲壮な顔を私は浮かべる。
本当は叫びたい。
手術が怖いって。離れたくないって。離れないでって。
でも、告白もできない私に、いま言う資格なんてない。
私は一人で涙をのむばかり。
そこでやっと来た。
『今日も、いけなくてごめんね』
彼に言い迫った自分に自責の念を感じつつ、
『ううん。私も言い過ぎた』
自分に言い聞かせるような言葉だった。
夜は更け、私の淡い心は夜空に少しずつ溶かされていった。