KMJストーリィ―アトカタモ―
届かない声には意味がない。
同じ場所にいても同じ物を見ることは出来ない。
同じ血が流れていても同じ感情は抱けない。
同じ顔をして同じ目をして同じ体温をしていても、でも。
側にいてくれないのは何故。
繰り返されるのは繰り言。
届かない声には、やっぱり意味がない。
がらんとして何もない場所に、一人で立ち尽くしてみる。
ここはあたしの場所じゃないのに。あんたの場所なのに。
でも、その場所すら捨てた相手に何を言っても無駄だと知っている。
どうしてと問う行為に、意味はあるんだろうか。
同じ時に生まれた自分の半身。双子の姉が、実はそうじゃありませんでしたなんて、そんな今更な話。言われたって困ると思ったのは、そんなに前のことじゃない気がする。
でも、気がするだけで、いつの間にか何年も経っていたりもする。不思議。
いや。でも、双子は双子なんだと思う。
ただ、魂だけが、余所の誰かの物だったりするだけで。
余所のというのもおかしいかもしれない。前世の? うわ、嘘くさい。
嘘くさいけども、本当だと言われた。
だから側にはいられないって、前世云々どうでもいいけどそれだけは許せないと言ったのに、でも駄目だと言われた。最悪。
──ねぇ、どうして。
今更なことを、何度も何度も繰り返す。本当は知っているけど。最低限教えてはもらえたけど。でも。
あたし一人残して、あの子は何年も何十年も何百年も生きるって、ねぇ、たかがそれだけって言ったら怒る?
残していくのはあたし。
でも去っていったのはあの子。
──ねぇ、どうして。
答えなんて返らない。それとも、もう答えたと思っているんだったら怠慢。こんなに心配させるなんてという言葉は傲慢?
だからって譲ってあげる気はない。
それが家族の特権というやつなんで。
とりあえず、流れる血が同じなのは嘘じゃないんだから。
だからだからだから、だから。
──ねぇ、どうして。
いつかいつかいつかいつか。
せめてもいつか、会いに来てと望む行為は我が儘ですか?
なんて聞いたって、誰も正解は教えてなんてくれない。そんなことは分かっていて、でも問いたくなるのは何故。
苦しいと、悲しいと、辛いと、寂しいと。言った時に慰めてくれる人だと思ったのにというのは甘え。それは分かっていて、でも言う。
繰り返し、繰り返し言う。忘れないで言う。
だって、そうなんだもの。
事実なんだもの。
曲がらない。曲げない。間違えない。
届かない声には意味がない。
忘れられたあたしには意味がない?
答えを知るのはあたしじゃない。
──でも、答えを求めるのは罪じゃない。
だからあたしは、まだ問いかける。
問いかける。ずっと。
それでも。
届かない声には意味がない。
作品名:KMJストーリィ―アトカタモ― 作家名:Bael