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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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飛行機雲の人

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そうして、夏休みが終わった。

とうとう俺はBの名前を覚えることがなかった。
夏休みが終わり、新学期になってから俺と奴が関わることはなかった。
もう二度と。
俺は奴のことを忘れてゆく。
奴は俺のことを初めから覚えていないだろう。




それでも、たまに思い出す。飛行機雲の空を。

空を見上げる。青い青い、真っ青な空。底のない青空には雲ひとつなかった。
つまらないな、そう思う。
飛行機雲があればいいのに。飛行機雲が見たい。大空にまっすぐな線を引く心地よい雲…。



心は空白の空へ浮遊する。

空に浮かんだ風船。
空っぽの風船の中身には何の心も無い。自分の心すら無い。
誰の姿も浮かばない。

風船は果てまで浮かんでゆける。
作品名:飛行機雲の人 作家名:冬野すいみ