最後に笑うのは誰だ―2
『いい健太郎……あなたはこの世界的企業の当主になるのよ?』
『当主…』
『そう……あいつの息子になんか、負けないのよ?勿論、力もね。』
当主に……
違うよ母さん
俺が
俺が言って欲しいのは…!
「!」
まるで走ったかのような息切れをして、健太郎は目覚めた。嫌な夢だ。
健太郎が一番嫌う、子供のころの母の遺言。
「あいつの息子、か……」
力も勝て、と言われた。
母は、母の姉の家族が大嫌いだった。なんというか、姉にコンプレックスがあったらしい。勝気な母は、どうしても姉に勝ちたかった。
息子と……この家に伝わる不思議な力を頼ってまで。
「坊ちゃま。」
ふすまの外から声がした。お手伝いだ。代々土屋家に仕えている。お手伝いも、おもてなしの心を本家に持ち、働いている。
そう、健太郎も本家の敷地に住んでいる。それなりに身分は高いが、離れにだ。
「なんだよ……」
「本日は会議でございます。」
「ああ……」
両親は、死んでいる。だから、この家を代表するのは、健太郎だ。
「行かなきゃなんねーのか?」
「健太郎さまがこの家の代表故……恵知奥様からそ」
「その名前を出すな!!」
「は、はい、申し訳ございません!」
「朝飯はいらない。すぐに行く。」
健太郎は、さっと着物を着ると、窓を開け、空を見る。真っ青だ。
自分の心のようだ。
「ふん……アイツの好きにはさせない。英も動いてること……知ってるか?流星。」
健太郎は、そう呟いて、家を出た。
作品名:最後に笑うのは誰だ―2 作家名:小渕茉莉絵