背中のホクロ。
カーテンの隙間から月明かりが差し込む部屋で、私は彼の背中のホクロに、唇を寄せて考える。
彼はそんな私の気持ちを知らないまま、タバコに火をつけて天井の隅を見つめる。
私の唇より、少しだけ冷たい彼の背中からは、唇を通して小さく鼓動を感じる。
私はその鼓動を聞く為に、今度は背中に耳を寄せる。
トクトクと、小さく波打つ鼓動は、私を切なくさせた。
彼はタバコの火を消すと、シャツに袖を通し、ネクタイを締める。
どうして男というものは、ネクタイを締めると知らない他人になるのだろう?
彼は自分勝手な言葉をいくつも放つと、私の部屋を後にする。
私は涙を見せないように、目を細めて笑うと、彼に手を振る。
部屋に残された吸い殻からは、細く煙が上がっている。
その煙は、月明かりの中に消えていき、彼の居た痕跡さえも消していく。
私は、こぼれないように涙を拭うと、唇を舐める。
彼のホクロに寄せた唇は、涙と同じ味がした。