Choice ~チョイス・その5~
Am3:50
デイヴ
あの男が失踪して半日が過ぎようとしていた。あの弁護士のダニエルが。
一度取調べをした弁護士のダニエルだ。本当にあいつは犯人じゃなかったのか。
いや、身の危険を感じ逃げ隠れたのか?
私は最初、そう思い。ダニエルを疑っていた。なんせ、犯行現場にそいつの私物が落ちていたんだから。
だが、捜査を進めるうちにそのせんは無くなった。ダニエルが誘拐される瞬間が、駐車場の監視カメラに映っていたのだ。豚のマスクをかぶった人物が、ダニエルを殴り、何かを注入して誘拐する瞬間をカメラはとらえていた。
どこに行ったんだ。
同一犯による連続殺人。同一犯によるものだと分かったのは、手口が同じだからだ。いつも同じ廃墟となった工場で、殺人を犯している。そして、本人の声と思われる声が録音された放送用テープには一貫して「ゲーム」という言葉が使われている。
ゲームの内容はいつも究極の選択を突きつけ、どちらを選ぶかによって生か死かが決まるようになっていた。
我々警察はそいつのことをチョイスと呼んでいる。
今までに生還者も何人かいる。いずれも大けがを負っているが。
きっとダニエルも今頃、ゲームに参加させられているはずだ。
となれば居場所は、あの廃墟しかない。
我々警察はその廃墟の工場へ向かった。
Am4:30
廃墟に足を踏み入れたのは、10人以上の武装警察と私の相棒のコークラン刑事だ。彼は小柄な白人で一見頼りないが、なんだかんだ言って5年は彼と組んでいる。
「デイヴ刑事。まず放送室に行きましょう。チョイスがいるかもしれません。」
「わかった。…おい、そこにいる5人!私達とこっちに来い。残りの者はダニエル・フォスターを探すように!」
「八ッ!!」
5人の武装警察とコークランと共に、いつも犯人が使っていると思われる放送室へ向かった。
放送室の扉を開けると、そのには誰の姿もなかった。しかし、その代わりに3台の小型テレビが置かれていた。そして、放送用テープも。
「コークラン。ここに映っているのは…。」
「ダニエル弁護士…ですね。」
3台のテレビには3つのアングルから撮られたシャワールームが写っていた。
3つのアングルにはそれぞれ人が写っていて、その中の一人にダニエルが居た。
「なぜダニエルだけ鎖に繋がれていないんだ?」
「変ですね…。」
3台のテレビとテープが乗せられてい長テーブルには、倒れたマグカップからこぼれた暖かいコーヒーが広がっていた。。その様子から、さっきまでここに誰かが居たことが分かった。
きっと慌てて逃げた時に、このコーヒーをこぼしたのだろう。
すると武装警察の中の1人があることに気が付いた。
「デイヴ刑事、ここにコーヒーの跡が。」
その武装警察が指さす先には、コーヒーが床に点々と線を作っていた。こぼれたコーヒーが服に付き、逃げて時にそれが服をつたって床に落ちたのだろう。
「デイヴ刑事。ここに居たのはチョイスではありませんね。」
「ああ、チョイスの犯行はいつも完璧だ。こんな慌てたりするはずがないな。…このコーヒーをたどって犯人を捜せ。」
武装警察に指示をする。
武装警察が立ち去った後、コークランと推理を始めた。
「ここに居たのはチョイスではない。誘拐されたのは3人。そして、ダニエルにだけ鎖が繋がれていない。これは…、ダニエルに仕掛けられたゲームなんでしょうか?」
「その可能性は高い。プレイヤーはダニエル。この犯行がチョイスによるものでないなら…、ダニエルを恨むものによる犯行かもしれない。」
「彼の秘書に聞いてみましょう。」
Am5:00
私とコークランはダニエルの秘書のクリスティーナと会った。
「こんな朝早くに申し訳ありません。」
「いいえ、ダニエルさんの一大事なのですから、私は構いません。」
クリスティーナはもうすでに着替えて、化粧をして会社に来ていた。仕事熱心な人だ。
「ダニエルが何か恨まれるようなことがありましたか?」
「…いいえ、私が知る限りではなかったと思います。…あ、でも1人だけ。」
「何ですか?」
「あの、ある一人の男性が、しつこく手紙や電話をしてきて…。」
「それは誰ですか?」
コークランがメモを取りながら聞く。
「ダニエルが昔弁護した被告を訴えていた原告の方です。…息子を殺された父親でして…。」
「その裁判にダニエルは勝ったんですね?」
「ええ。」
「ダニエルが不正をしたとかではないのですか?」
コークランが眉間にしわを寄せ、質問をぶつける。
「さぁ、私にはわかりません。でも原告側の父親は裁判の結果に納得できて居ませんでした。とにかく、私がわかる範囲ではダニエルを恨んでいる可能性が高いのは、その元原告の男性の方だと思いますが。」
「その人の名前は?」
熱心にメモを取るコークランに変わり私が質問する。
「ネイト・カーターです。」
「住所は?」
「ooooooooです。」
コークランはメモをとりおわり手帳をパタンと閉じた。
「ご協力ありがとうございました。」
Am6:40
クリスティーナから聞いた住所の場所はとても遠い場所にあった。しかもネイトもネイトの家族もそこにはいなかった。
「時間を掛けてここまで来たのに…。無駄足でしたね。」
「とにかく、あそこにいたのはネイト・カーターの可能性が高いな。」
「そうですね。」
その時、無線が鳴った。
「何だ。」
「大変です!!部隊のうち8人が罠によって死亡しました!!残りは、私を含めてあと3人です!!」
叫び声に近い声だった。
「何!至急、そっちに向かう!」
「い、急いで!!大変だ!で、でも罠には気を付けて下さい!!うわぁぁあ!!!」
「おい!どうした何があった!?」
声が途絶えた。
無線の奥からは嫌な音が聞こえる。
そんな…。
「デイヴ刑事。何があったんですか?」
「廃墟にいた全員が殺されたようだ…。」
「えっ!?部隊を呼んで、至急私達も向かいましょう。」
Am6:50
デイヴ
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作品名:Choice ~チョイス・その5~ 作家名:Sami Sammy