自由と鳥かご。
彼女はそう言うとコーヒーに角砂糖を二つ落とした。
スプーンで静かにコーヒーをかき混ぜようとする姿は、大人の雰囲気と子どもの無邪気さが感じられた。
『自由ってのは、きっと不自由の中にあるんじゃないかな?』
僕はコーヒーカップに口を付けると、煙草に火をつけて彼女に話す。
「仕事をしてなかったら、好きなことができないってことかな?」
彼女は湯気の昇るコーヒーに息を吹きかけて冷ましている。
『そうだね。みんな仕事が無かったら、仕事を探すでしょ?きっと自由なら、不自由を掴み取ろうとするんだよ。』
彼女はコーヒーに口を付けるとすぐに口を離し、また息を吹きかけている。
何度かコーヒーカップに口を付けながら、彼女は考え事をしている。
しばらくの沈黙。
僕は煙草の煙を、天井に向けて吐き出すと、静かに灰皿で火を消す。
「分かった!」
彼女はそう言うと、コーヒーカップを小さな音を立てて、ソーサーに置いた。
「鳥かごの扉は開いたままなんだよ。外にも出れるし、中にいることもできる。自由って、そういうことなのか な?」
僕はコーヒーに口を付けて、小さく笑って彼女を見つめる。
彼女は僕の笑顔を不思議そうに見つめると、コーヒーカップについた口紅を拭き取る。
『僕が君と一緒にいるのも、きっとそういうことなのかもね。』
彼女は僕の言葉を聞いて少し考えると、子どものようににんまりと笑って、再びコーヒーに口を付けた。