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ドラゴンクエスト・アナザー

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第七話 「二人の勇者(後編)」


 話をしている間にレイたちは洞窟についた。
「ここが魔物のボスのすみかさ」
一行は中へ入り、魔物たちを倒しながら進んでいく。
だが突然魔物に襲われたレイは、両腕を取られ動けなくなった。
それを見たカイが二人にささやく。
「どうする? 逃げ出すなら今だぞ」
「で、でもレイが……」
「大丈夫だ。あいつはあのぐらい一人で切り抜けられる」

 三人が迷っていると、レイが話しかけた。
「いいよ、行っても。でもたとえボク一人になってもここの魔物は倒して見せる」
三人はレイの目に固い決意を見た。
アレフが魔物を剣で切り裂きレイを助けた。
レイが不思議そうに聞いた。
「どうして逃げなかったんだい?」
「ここの魔物退治までは付き合ってやろうと思ってね。逃げるのはそれからだ」

 途中でレイがとつとつと話し始めた。
「ボクはおじいさんに育てられた。でもおじいさんは魔物に襲われて亡くなってしまったんだ。何もできなかったボクは悔しかった」
レイは話を続けた。
「ボクは以前から自分が天空の盾を装備できることを知っていた。でも勇者の力は何も現れなかった。そんな時、ある人がこの赤い珠をくれたんだ。この珠を使えば強くなるって。それからさ、ボクが変わったのは」
三人は黙って聞いている。
「ボクは攻めてくる魔物を倒し続けた。そして呪文を覚え、ライデインまで使えるようになった。望んでいた勇者の力を手に入れたんだ。ボクはこの珠をくれた人に感謝しているよ」
話を聞いた三人は何も言えなかった。

 やがて一行は洞窟の最下層にたどり着いた。
奥にはボスと思われる魔物がいる。
そばにいくと魔物が話し出した。
「わたしの名はギドラ。おまえたちが来るのを待っていた」
そう言うと突然ギドラは静寂の玉を天にかざした。
レイたちの呪文はすべて封じられてしまった。
ギドラはさらにイオナズンを唱える。
レイたちは大きなダメージを受けた。
四人も応戦するが、ギドラのイオナズンでダメージを受け、瀕死状態になってしまった。
それを見たギドラは再び話しだした。

「冥土の土産に教えてやろう。レイよ、おまえにその赤い珠を与えたのはわたしなのだ」
「そ、そんなばかな!」
「その珠は魔力でおまえの力を増幅している。つまりその珠の力がなくなれば、おまえも力をなくすというわけだ。そしてわたしはその珠の力を操ることができる」

 ギドラが突き出した手を握ると、赤い珠の光は消えレイは地面へ崩れ落ちた。
「う、うう」
次にギドラは握った手を開くと、珠は再び光り始めレイの力が戻る。

「街は外からの守りが固いのでな。中から崩してやろうと思ってたところ、おまえが隠れて天空の盾を装備しているのを見て、利用することを思いついたのだ」
「それがこの赤い珠なのか」
「そうだ。力を欲していたおまえに力を与え、有頂天になったところにわたしの居場所を教えれば、天空の盾を持ってわたしのところへのこのことやってくると考えたのだ」
レイはもう言葉がなかった。
「そしておまえはわたしの思惑通り、こうして盾を持ってやってきた。後はお前を殺して天空の盾を奪うだけだ」

 そう言うとギドラはレイに襲いかかった。
レイはギドラの攻撃を盾で受けるが、天空の盾は二つに割れてしまった。
「そんな。天空の盾が割れるなんて……」
「ふん、盾は偽物であったか。それではおまえも偽の勇者なのだな」
「ボクが偽物……」
「とんだ茶番だ。もうよい」

 ギドラが手に力を込めると赤い珠は粉々にくだけ散った。
レイは苦しげに倒れこむ。
三人はレイのそばに駆けよるが、呪文が封じられていて何もできない。
「何をしようと無駄だ。今までその珠の魔力で、能力以上の力を無理やり引き出していたのだ。その魔力がなくなった今、生きられはしまい」
「なんてひどいことを!」
「ここまで人をもてあそぶのか!」
「安心しろ。四人ともまとめて片づけてやる」
ギドラはイオナズンの呪文を唱え始め、マリアたちは観念し目を閉じた。

 そのときどこからかブーメランが飛んできて、ギドラの目に刺さった。
ギドラはブーメランを投げ捨て叫んだ。
「だ、誰だ!」
一行が目を開けると一人の少女が立っている。
「セーラ!」
「遅れてごめんね」
「それよりレイが!」
セーラが駆けよるとレイは目を開けた。
セーラはベホイミを唱えた。
しかしもはやレイには効果がなかった。
「ごめんよ。偽物はボクの方だった。それにあの天空の盾も偽物だったみたいだ…… 魔物の思い通りに操られていた自分が情けない。お願いだ…… ボクの代りに世界を平和にしてほ……」
レイは静かに息を引き取った。

「別れは済んだか? それではおまえにも死んでもらおう」
「許さない!」
セーラは怒りに震えギドラを
睨み付ける。
そのときセーラの青い珠が輝きだし、さらに割れた盾も光り始めた。
盾は一つになりみるみる形を変え、やがて新しい盾へと変化した。
セーラが盾を装備すると、左手にしっくりとなじむ。
これが天空の盾の真の姿であった。

「おまえの珠はわたしの前では封じられるはず。それがなぜ」
「あてが外れたようね。いくわよ!」
すかさずギドラは静寂の玉を使おうとする。
だがカイが先ほどのブーメランで静寂の玉をたたき落とした。

「おのれ!」
ギドラはイオナズンの呪文を唱え始めた。
セーラがふと天空の盾を見ると、先ほどより輝きが増している。
セーラは天空の盾を天にかざしてみた。
セーラの前に輝く光の壁が現れた!
そして光の壁はギドラの呪文を弾き、逆にギドラにダメージを与えた。
さらにセーラは攻撃を重ねる。
もはやギドラに攻撃手段はなかった。
セーラがとどめの呪文を唱えると、電撃がギドラを襲う。
ギドラを倒した。

「今のは……ライデイン!?」
「セーラもライデインが使えるのか!」
「やっぱりセーラが勇者だったんだな」
「みんな大丈夫?」
セーラは三人にベホイミをかけた。
「ありがとう。オレたちは平気だけど……」
「レイが……」
「レイの最後の願いはなんとしても叶えよう」
一行は決意を新たにセテロを後にした。
セーラは心の中でつぶやく。
(さようなら、もう一人の勇者さん)