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ドラゴンクエスト・アナザー

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第六話 「二人の勇者(前編)」


 東の大陸に着いた一行は、近くにある祠に入り中の人に話を聞いてみた。
すると東にあるセテロという街に、天空の盾があるという。
さらにその街には勇者がいるらしいということがわかった。
話を聞いた四人はセテロに向かった。
ところが魔物たちも天空の盾がセテロにあることを知り、街に攻めてきていたのであった。
しかしながらこの街は壁に囲まれた城塞都市であるため守りが固く、これまで魔物たちの侵入を許さなかった。
だが既に魔物の一味が潜入していたことに気づいた者は誰一人いなかった。

 セーラたちが中に入りあたりを見渡すと、街の一角に盾を持った少年がいた。
彼が勇者と呼ばれる人物のようで、首から下げた珠が赤く輝いている。
「あちらの勇者さんは赤い珠なのね」
「私の青い珠と何か関係があるのかな」
「まあまず情報収集してみよう」
一行は彼のことを街の人々に聞いてみた。
最近までは気の弱い普通の少年だったようである。
しかしある日勇者として目覚め、呪文や天空の盾が使えるようになったという話であった。

 人々に話を聞いているとき、一人の男が走ってきてセーラにぶつかった。
「おっとごめんよ!」
そう言うと男はニヤリとして去って行った。
「なによ、失礼な男ね。セーラ大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「一通り聞き終わったからあの少年に話を聞いてみるか」

 一行は少年に話しかけてみた。
「ボクの名前はレイ。ボクが魔王を倒す勇者さ」
レイはセーラの方を向いて話しかける。
「君が勇者と呼ばれている女の子だね。噂は聞いているよ。でも勇者は二人もいらないと思わないかい? そこで君が本物の勇者か試させてもらうよ。この天空の盾を装備できるかな?」
レイは自分が装備している盾をセーラに渡した。
見るとずいぶん古ぼけた盾である。
本当に天空の盾なのか半信半疑ながらも、セーラは盾を装備しようとした。
しかし盾は岩のように重く感じられ、装備することができない。
そして青い珠は何の変化もなかった。

「やっぱり装備できないようだね。あとボクはこういう呪文も使えるんだ」
レイが呪文を唱えると、あたりに電撃が走る。
それは勇者だけが使えるデイン系の魔法、ライデインであった。
「君はこの魔法を使えるかい?」
セーラはうつむいて黙っている。
「さあみんな、これでどちらが本物かよくわかっただろう。偽物は追放だ!」

 セーラは兵士たちに捕えられ、すぐさま街の外に放り出された。
「セーラは勇者じゃなかったのか……」
「あれだけ違いを見せつけられちゃなあ」
「でもたとえ勇者じゃなくたってセーラはセーラよ! あたし連れ戻してくる!」
マリアは街の外に向かおうとしたが、兵士たちに回りを取り囲まれてしまった。
「な、何なの?」
「君たちは今後ボクの仲間として、魔王退治の旅に付き合ってもらうよ。いいね?」
そう言い、レイは三人に笑いかけた。

 街を追い出されたセーラは途方にくれていた。
彼女は勇者であることにこだわってはいなかったが、自分の存在理由を否定されたようで悲しかったのである。
誰か相談できる人がいればと考えながら歩いていると、ふと以前青い珠の呪いを解いてくれたオルドを思い出した。
(そうだ、あのおじいさんなら助けてくれるかもしれない)
セーラはそう考え、オルドのところへルーラで飛んで行った。

 オルドに会ったセーラは、セテロの街での出来事を話した。
「ふむ、事情はわかった。ちとその青い珠を見せてくれんか」
セーラは珠をオルドに渡した。
「ふうむ。よく見ると珠にくすみが見えるのう。多分魔物に細工をされたんじゃろ」
「細工?」
「以前の呪いのようなものじゃ。この細工をした魔物の近くにいると、青い珠の力が封印されてしまうようじゃの」
そう言うとオルドは再び青い珠を浄化してくれた。
「ほれ」
「おじいさんありがとう!」
「あとお主はライデインの呪文を間違って覚えたようじゃな」
「え?」
「ちとじっとしておれ」
オルドはセーラに喝を入れた。
セーラの頭の中で古い呪文が消え去り、新しい呪文が浮かび上がる。
「これでお主もライデインが使えるはずじゃ」
「それじゃ私、勇者なの?」
「そういうことになるかのう。まあ自信を持つことじゃ」

 だがセーラには以前から気になっている疑問があった。
それをオルドに聞いてみる。
「私、以前の記憶がないの。これも何かの封印なのかな」
「おそらくそうじゃろう。だがわしにはその封印の正体がわからぬ。残念ながらわしにはお主の記憶を戻すことはできんのじゃ」
「そうなの……」
セーラは肩を落とした。
「それよりお主の仲間が気になる。早く行ってやるのじゃ」
「はい!」
セーラは礼を言いルーラで飛んで行った。
「なぜあやつが動き出したのじゃ」
オルドはそうつぶやいた。

 そのころマリアたちはレイと話をしていた。
「この街にある天空の盾を狙って、以前から魔物たちが攻めて来ていたんだ」
「この街には城壁があるんじゃないのか」
「ああ。ただいくら周りに壁があるといっても、魔物たちを迎え撃つのは大変でね。ちょうどそのすみかがわかったんで、君たちと倒しに行こうと思うんだ」
「その前にセーラを返して!」
「セーラ? ああ、あの偽物のことか。彼女のことはいまさらどうでもいいじゃないか。君たちは力を買われてボクに選ばれたんだよ。光栄じゃないのかい?」

 三人があきれて黙っているので、レイは話を続けた。
「ここに攻めてくる魔物のボスをやっつけたら、次は勇者としての務めを果たすため魔王退治の旅に出るつもりさ」
「俺たちが断ったらどうするんだ?」
「断ることもできるけどね。その場合にはしばらくここにいて兵士たちを鍛えてもらいたい」
「なんでオレたちがそこまでしなきゃならないんだ!」
「君たちが行けないのなら、君たちの代理を育ててもらいたいということさ。まあいい。もう一度聞くよ。ボクの仲間になるかい?」
「ちょっと相談させて」
マリアは即答を避けた。
「マリア、何かいい案があるのか?」
「ここは一度仲間になって、魔物のすみかに行ってからまたここに帰ってくる間に逃げ出すの」
「うまくいくかな」
「仲間になったふりでもしないと、多分この街から出られないと思う。セーラも心配だし」
「よし、それで行こう」
後ろを振り向いてマリアが言った。
「わかった。仲間になるわ」
かくしてマリアたちはレイとともに魔物のボスを倒すことになった。

「それじゃ魔物を退治して来るぞー!」
レイが声を張り上げる。
すると街中の人々が見送りに来た。
「きゃー! レイ頑張ってー!」
「兵士はもうかなり消耗している。なんとしても倒してくれよ!」

 一行は出発した。
「人気あるのね」
「ボクは勇者だからね」
「見送りの時、兵士が消耗しているとか聞こえたが、そんなに魔物の攻撃は激しいのか」
「兵士たちは交代で一日中街を守っている。魔物はいつ攻めてくるかわからないからね。だけどもうみんなの疲れが限界なんだ」
「そうなのか……」
「だからどうしてもやつらのボスを倒さなければならない。そこでボクは経験豊富な君たちの力を借りることにしたんだ」
レイの話を聞いたマリアたちは複雑な気持ちであった。