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ドラゴンクエスト・アナザー

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第五話 「平和は誰のために」


 一行は街を出て東へ向かっていた。
アルメリアが襲われた夜、大勢の魔物たちが東へ飛んで行くのを見たと、ミラで聞いたからである。
「このまままっすぐ行っても海しかないぞ。回り道してブランドール城へ行こう」
地図を見ていたカイが提案する。
四人はブランドールに向かうことにした。

 途中に湖があったので、一行はそこで一休みすることにした。
セーラは水遊びを始めた。
他の三人はそれを見て話をしている。
「セーラは本当に明るくなったわね」
「明るくっていうかあれじゃ天然だぞ」
「俺は別に問題ないと思うが」
「ところでセーラって勇者だと思う?」
「わからん。天空の武具が装備できるか、勇者専用の呪文を使えるか、どちらも不明だ」
「でも攻撃魔法、回復魔法、それに剣が使えるぞ」
「それだけなら魔法戦士も同じだろう」
「相変わらずアレフは夢がないんだから。もしセーラが勇者なら、あたしたちも選ばれし者になるんじゃない?」
「それはともかくセーラが勇者かどうかは、我々が決めることではない。様子を見るしかないだろう」
「まあそうだな」
三人はセーラを呼び、再びブランドールへ向かった。

 ブランドール城につくと、兵隊が訓練をしている姿が見えた。
聞くと最近魔物の被害が多いため、付近の魔物を退治し平和を守っているということである。
この世界において魔物に襲われることはそれほど珍しいことではない。
実際兵士の中にも、家族が魔物に襲われた者が何人もいた。

 途中セーラたちの姿を見て、老人が話しかけてきた。
「お主たちは勇者様の一行じゃな。この国には、魔王甦りしとき青き珠を持つ勇者旅立たん、という言い伝えがあるのじゃ。最近各地で街が魔物に襲われたと聞く。そんな中お主たちが現れたのは、魔王が甦ろうとしておるからかもしれんのう」
「ところでお主たちは伝説の装備を手に入れなさったか? 四つの装備を手に入れると神様に会うことができるそうじゃ。神様なら魔王のこともなんとかしてくれるかもしれんぞい」
天空装備を集めると本当に神様に会えるのだろうか。
もしそうなら、アルメリアの人たちを生き返らせてもらいたいと、セーラは思った。

 城に入りブランドール王の下に行くと、なぜか王が二人いる。
セーラが目をこすっていると、一人はどこかへ逃げていってしまった。
王が話しだす。
「今のはわしに化けたマネマネじゃ。いつごろからかあやつらがこの城に入り込んで、今のようないたずらをするようになったのじゃ。これまでのところは人に危害は加えておらぬが、いつどうなるかわからんからのう」
王はさらに続ける。
「真実の姿を映し出すと言われるラーの鏡があれば、マネマネどもを元の姿に戻せるのじゃが。そこでそなたらを青き珠を持つ勇者一行と見込んで頼みがある。近くの王家の塔にあるラーの鏡を取ってきて欲しいのじゃ。あの塔は今や魔物の巣となっていて、この城の兵隊たちでは歯がたたんでのう。塔にはカギがかかっておるが、これで開くじゃろう」
そういうと王は盗賊のカギを渡した。
セーラは盗賊のカギを手に入れた。

 入り口の扉を盗賊のカギで開け、一行はラーの鏡を取りに王家の塔を上って行った。
確かに現れる魔物たちは手強い。
五階建ての塔の最上階が果てしなく遠く感じられた。
そんな中、セーラは新しい呪文を覚えた気がした。
頭の中に浮かんだ呪文を唱えてみるが、何も起こらなかった。
どうやら気のせいらしい。
セーラは戦闘に集中することにした。

 さてやっとラーの鏡を手に入れ、一行は王の下へ戻った。
鏡を渡すと王はセーラたちを褒めたたえる。
そして鏡を兵士長に渡し、マネマネを退治するよう命じた。
ラーの鏡で元の姿に戻されたマネマネたちは、次々と兵士たちに討たれていく。
たとえ魔物とはいえ、何の危害も加えていない者たちが倒されて行くさまを、セーラは見ていられなかった。
やがてマネマネたちは全滅し、ブランドールの人々は喜んだ。
人々が魔物を恐れる気持ちはわかる。
だがセーラには納得しがたい結末であった。

 ブランドールで南東のマルドックという街に船があるという話を聞き、セーラたちはそこへ向かっていた。
その途中、森の中で獣用の罠にかかっているホイミスライムの子供を見つけた。
ホイミスライムは悲しそうにこちらを見ている。
マリアが罠を外し助けてやると、ホイミスライムはうれしそうに駆けていった。
「ちょっと、何するんだよマリア!」
「魔物を助けるとはどういうことだ」
「だってかわいそうじゃない」
「あいつが人を襲ったらどうするんだよ!」
「私は悪い魔物だけじゃないと思うの」
「セーラまでそんなことを言うのか。俺は知らんぞ」
四人の雰囲気が悪くなってしまった。

 そして一行はマルドックに着いた。
街の中で話を聞くと、船は商人のソクラスという人物が持っているという。
ソクラスは人がいい男のようで、街のみんなが褒めていた。
「ソクラスさんはいい人でねえ。よく街の仕事を手伝ってくれるんだよ」
「本当にあんな親切な人はいないね」
「あたしゃ前からやさしい人だと思っていたよ」

 一行がソクラスの家へ行くと、ソクラスはにこやかに出迎えてくれた。
「やあ、いらっしゃい。皆さんの噂はこの街まで届いています。おお、あなたが勇者様ですね。世界の平和をお願いしますよ」
そこに幼い少女がやってきた。
彼女はソクラスの娘で、タニアという名前である。
マリアがあいさつをするとタニアもあいさつをし、ありがとうと言う。
だが四人にはありがとうの意味がわからなかった。

 さて一行の話は本題に入る。
船のことを聞くとソクラスは困った顔をしてしばらく考えさせて欲しいとのこと。
この街の人も使うので急には貸せないようである。
四人はこの街に泊まることにした。

 朝、セーラが起きるとなにやら外が騒がしい。
三人に聞くとブランドール城の兵士がやって来ているとのことである。
一行が外に出てみると、街は既に兵士たちに取り囲まれていた。
兵士の一人に話しかけると、魔物がこの街に入って行くのを見たものがいるので調べているところだと言う。
セーラたちはソクラスの家へ行ってみることにした。

 家に着くとソクラスがタニアをつれて駆けよって来た。
「皆さんお願いです! 船を差し上げますので、今すぐ娘を連れて出かけてください! どうかお願いします!」
しかしセーラたちは急な話に戸惑っている。
そのとき兵士たちがやってきた。
「この家の者で魔物が街にいるのを見たものはおらんか!」
「い、いえ。見たことはありません……」
「そうか。しかし念のためだ。調べさせてもらうぞ。おい、あれを」
「はっ」
兵士はラーの鏡を取り出し覗きこんだ。
鏡の中に、ソクラスとタニアに姿を変えているホイミスライムの親子の姿が見える。
なんとソクラスとタニアは元の姿に戻ってしまった。
子供のホイミスライムは、森でマリアが助けた魔物であった。