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ドラゴンクエスト・アナザー

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第四話 「青い珠の秘密」


 宿を飛び出したセーラは、雨の中街の外をとぼとぼと歩いていた。
(私は要らない人間)
(もうどこにも居場所はない)
止めどなく涙があふれてくる。

 あてどもなくさまよい歩いているうちに、スライム8匹と遭遇した。
しかしセーラは完全に戦闘意欲を失っていた。
(またスライムかぁ)
(さすがに今度は誰も助けてくれないだろうなあ)
(ここでやられちゃうのかな)
(それもいいかな)
スライムたちは無抵抗のセーラに、絶え間なく攻撃を加える。
セーラは気を失った。
いつしかそこに昼間の占い師が立っていた。
占い師はギラを唱えスライムを一掃した。
そしてセーラを背負うとどこかへ消えて行った。

「親父……」
カイは宿の暗闇の中、一人いた。
「オレがもっと強ければ一緒に戦って、親父と村を救えたかもしれないのに。もっと、もっと強ければ……」
カイは悔しさで一杯になり涙をこぼした。

 夜が明け、雨は止んでいた。
マリアとアレフは一晩中セーラを探したが、見つけることはできなかった。
そのためいったん宿に戻り、休むことにした。

 朝になりセーラが目を覚ますと、そこはどこか知らない場所であった。
起き上がろうとすると、声をかけられる。
「もうよいのか」
「あ、あなたは街で会ったおじいさん! もしかしてあなたが助けてくれたのですか? どうもありがとうございました」
「うむ、わしゃオルドという者じゃ。それよりどうしたというのじゃ。夜中に雨の中を一人で出歩くとは」
「あの、それは……」
「言いたくなければ言わんでもよい。ところでお主が持っている珠を見せてくれんかのう」
「これですか?」
「おおそれじゃ。ううむ、これはどうやら呪われているようじゃの」
「呪い?」
「うむ。この珠はな、いわばお主の力の源のようなものじゃ。だからけして壊したりなくしたりしてはならぬ。だが何者かがこの珠に呪いをかけ、お主の力を封じているのじゃ」
「それじゃ珠の呪いが解ければ……」
「お主が本来持つ力を使えるようになるはずじゃ。どれ、わしが呪いを解いてやろう」

 そういうと、オルドは珠の周りに手をかざし、なにやら力を集め始めた。
そして何かを唱えた後しばらくすると珠の色が徐々に変わり始め、青く光る珠が現れた。
「きれい……」
「ほれ。これを持ってみい」
オルドはセーラに青い珠を渡した。
セーラが珠を受け取るとその青い光に呼応して、床に置いてある家宝の剣も光りだす。
「すごい! 力が湧き上がってくる!」
なんとセーラのレベルが上がった!
「それが現時点でお主が本来持っている力じゃ。今のお主なら魔法も使えよう」
「私が魔法?」
セーラはうれしくなってきた。
「おじいさん! 何から何までありがとう! あっ、私の名前はセーラ。おじいさんの名前は聞きましたっけ?

「わしゃオルドじゃ」
「ああ、聞きましたよね。ごめんなさいおじいさん」
「だからわしゃオルド…… まあよい。セーラよ、すぐ街に戻りお主がなすべきことをするのじゃ!」
「はい! おじいさん、本当にありがとうございました!」
セーラは去ったあとオルドがぽつりとつぶやいた。
「あやつ性格まで封印されておったか」

「さてと街はどっちかな」
セーラがさまよっているうちにまたも8匹のスライムに遭遇した。
「昨日はやられたけど、今日はそうはいかないんだから」
セーラはギラを唱えた。
一撃でスライムたちを倒した。
「すごーい!」
セーラはもう有頂天である。
みんなに自分の新しい力を見てもらいたくて街へ急いだ。

 だがセーラがミラにつくと不穏な空気が流れていた。
なぜか魔物が街に入りこんでいるのである。
セーラがみんなを探すと、マリアとアレフが魔物たちと戦っている姿が見えた。
「みんな! 大丈夫!?」
「セーラ! 今までどこに!? いえそれよりも今は魔物を倒すのが先決!」
「あいつを剣で切ろうとすると分裂するんだ!」
見るとメラゴーストだらけである。
「大丈夫。任せて」
不謹慎ながらセーラはくすっと笑ってしまった。
(昨日の夢はこれだったのね)

 剣を構えて魔物たちの前に立つ。
(まずは増殖した魔物をどうにかしないと)
セーラは二フラムを唱えた。
メラゴーストたちを光の中へ消し去った。
「すごい……」
(残りは二匹!)
セーラは暴れコマ犬に切りかかる。
まさに瞬殺であった。
魔物たちは全滅した。

 セーラは改めて声をかける。
「みんな大丈夫?」
「もうMPがないけどあたしは大丈夫。それよりどうしたの? その力」
セーラはオルドのことを話した。
「そうか、呪いのせいでレベルが上がらなかったのか」
「でもセーラって剣だけじゃなく攻撃魔法も使えるのね。びっくりしちゃった」
「あれ? カイは?」
「回復できないのでそこらで倒れてるはずだ」

 そのときカイが声をあげた。
「オレはここだ」
「カイ、今治してあげる」
セーラはべホイミを唱えた。
「ええ!? 回復魔法まで使えるの!?」
マリアが驚く。
「大丈夫?」
「セーラ、すまん」
「え?」
「オレは君を足手まといだと言った。だがそのオレがこのざまだ。ヒャド系の呪文が苦手なため、炎系の魔物が現れると手も足も出ない。おかげでオレが足手まといになってしまった」
「ううん、そんなことない。だってレベルアップしていっぱい呪文覚えるのこれからだし。私も頑張るからカイも頑張ろ。ね?」
「ごめん、セーラ本当にごめん」
カイは心から後悔し、涙を浮かべて謝った。

「さて一見落着ね。ってそういえばセーラって今”カイ”て呼ばなかった?」
「どうやら能力とともに性格も変わってしまったようだな」
話をしているみんなをセーラが呼ぶ。
「何話してるのー? ごはん食べてお風呂入ってたっぷり寝ようよ!」
マリアとアレフは顔を見合わせて肩をすくめた。