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ドラゴンクエスト・アナザー

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第二話 「襲撃」


 セーラが村にやってきてから数週間が過ぎた。
その間セーラはマリアたちに魔法や剣の修業をしてもらったが、残念ながら上達は見られなかった。
「私、何もできない……」
セーラは己のふがいなさに涙を浮かべた。
「大丈夫よ。これから頑張れば」
しかし何の戦力にもならないことが悔しかったのか、いつまでもすすり鳴く声が聞こえた。
そしてまた数週間、セーラの修業は相変わらずであったが、剣の扱いは多少慣れたようであった。

 そんなある夜、自室で本を読んでいたセーラはふと外が騒がしいことに気がついた。
様子を見に行こうと立ち上がった瞬間、マリアの声が聞こえる。
「セーラ! 起きてる!?」
「は、はい! 外が騒がしいので今見に行こうと」
「どうやら魔物の襲撃を受けているらしいの! あなたも来て!」
「はい!」
いったい私に何ができるのだろうかと考えながらも、マリアについていった。

 外に出てみると、村人たちが大勢の魔物と戦っていた。
ところどころ火の手が上がっている。
「おじいさまの姿が見えない! セーラ、あたしはおじいさまを探してくる! あなたは子供たちを避難させて!」
「わかりました!」
泣き声を頼りに子供を見つけ出し、安全な場所に連れていってやる。
そのうち、とりわけ大きな魔物が村人たちと戦っているのが見えた。

「セーラ、こっちへ」
「あ、カイさん、アレフさん!」
「あそこで戦っているのがオレたちの親父だ」
「ええ! そうなんですか!?」
「多分親父たちの相手が、攻めてきた魔物たちのボスのはずだ」
「俺たちが言うのもなんだが、父さんたちはこの村で五本の指に入る強者だ。勝てばいいが負ければこの村は全滅だろう」
「そんな……」
「しかし何だって、魔物はオレたちの村を襲ってきたんだ?」
「思い当たるとすれば、この村のどこかにあるという天空の剣だ」
「なぜ魔物が天空の剣を狙う?」
「わからん。だいたい剣の話も言い伝えでしかない」
「そうですね……」
「とにかく今は、父さんたちが勝つのを祈るしかない」

 だが、力の差は歴然であった。
魔物は炎や吹雪を吐き、パーティーのHPを削り取っていく。
反撃する間もなく、パーティーは全滅した。
「親父!」
「父さん!」
カイとアレフは怒りに我を忘れて、魔物に飛びかかって行った。
「ああ! カイさん! アレフさん!」
しかし二人は魔物の一撃をくらい、動けなくなってしまった。
「なんだこいつらは。まあこんなゴミはどうでもいい。オレ様にはやることがあるのだ」
そう言うと魔物は村の奥へ消えて行った。

「アレフさん! カイさん!」
「ちきしょう……歯がたたねえ……」
「しゃべらないで!」
セーラは持っていた薬草を二人に使うと、先ほどの魔物を追いかけていった。
(戦うには何か武器が必要ね)
ふとセーラはマリアの家の壁に飾ってあった剣を思い出した。
そしてマリアの家に行き、壁の剣を手に取ってみる。
「これ……私にも装備できる!」
セーラは剣を持ち再び魔物を追った。
しかし黒い珠と剣がわずかに光を帯び始めたことには気がつかなかった。

 そのころジムラは先ほど村人たちを倒した巨大な魔物と対峙していた。
「おまえたちは一体何のためにこの村を襲ったのじゃ」
「ふん、この村には昔勇者が使ったという剣があるだろう。そいつをもらいに来たのだ」
「そんな物は聞いたことがないな」
「とぼけても無駄だ。死にたくなければ、とっととその剣を差し出せ!」
「知らぬ」
「ならば力ずくでもらっていくだけだ」
「マリア、おまえはそこで見ておれ」
「は、はい」

 戦いが始まった。
魔物は先ほどと同じく息攻撃を仕掛ける。だがジムラは歴戦の賢者であった。
フバーハ、ベホマ、メラゾーマなど多彩な魔法で応戦する。
「きさまがこの村一番の使い手か。ではこれではどうだ」
魔物は仲間を呼んだ。
ハエ男が現れた。
ハエ男はマホトーンを唱えた。
ジムラは魔法を封じられてしまった。
戦いは力対力となったが、この展開はジムラに不利であった。
徐々に押されていき、ついに痛恨の一撃を受けてしまった。

「おじいさま!」
「マリア。く、来るな!」
「まったく手間をかけさせやがって。おい、そこの地面の扉を開けて中を探してみろ」
「は! バルガ様!」
魔物たちは扉をこじ開け、中を探し始めた。

 そのうちある魔物が一本の剣を持って出てきた。
「こんな錆びれた剣が? おいじじい、答えろ。これが天空の剣なのか?」
「知らぬ。わしもその剣は初めて見る」
「そうか。それではおまえは用済みだ」
そういうとバルガはジムラにとどめを刺した。
「ぬわぁぁぁー!」
「おじいさま!!」
「マリア! 待って!」
マリアがかけ寄ろうとしたとき、セーラが現れた。

「よくも……よくもジムラさんを!」
セーラの構える剣が光っている。
「またゴミが現れたか。おい、おまえたちで片づけておけ」
「そうはいかないわ!」
セーラはハエ男に切りかかり、会心の一撃でハエ男を葬り去った。
そのあとも襲ってくる魔物たちを、セーラはすべて会心の一撃で倒していった。
「すごい…… セーラにこんな力があったなんて。それにあの光っているのは家宝の剣?」
ふと魔物が持っている天空の剣を見ると、こちらもうっすらと光っているように見える。

 ついにバルガが動いた。
「いまいましいゴミめ。このオレ様が直々に相手をしてやろう」
戦いはセーラが先手を取った。
セーラの会心の一撃が、次々とバルガに命中する。
セーラはさらにダメージを加えていき、バルガの動きは鈍っていった。
「きさま……何者だ? くそう、あのじじいにやられてなければ」

 だがセーラの優勢は長くは続かなかった。
バルガが吐いた炎がセーラを直撃し、これが致命的になりセーラは気絶した。
「この女一体……? ここで殺しておくか」
「バルガ様! ギルドラス様がまだかと催促されています!」
「ちっ、運のいいやつめ。者ども、引き上げだ!」
魔物たちは去って行った。
周りの散々たるありさまに、マリアは気を失ってしまった。