食事と血液の関係性。
彼女は皿にナイフとフォークを置くと、ナフキンで口を拭きながら僕に聞いた。
『生きるためじゃないかな?血を作るため。』
僕はレアステーキを切り分けながら答える。
とっさに血という言葉が出てきたのはきっと、肉の切れ目が綺麗な赤だったからなのかもしれない。
「そうね。となると、血液はきっと消耗品なのね。血は流すためにあるのかもしれないね。」
彼女はそう言うと、血のように赤いワインに口をつけ、グラスを置くと口紅を指で拭った。
そして、薫りを楽しむように少しだけ目を閉じて、目を開くと同時にワインを飲み込んだ。
『血を流すために食事をしているのかな?それって何だかおかしな話だね。』
彼女は小さく笑うと、ナイフとフォークを手に取り、肉を切り分けて口に入れる。
赤身肉の良いところは、噛めば噛むほどに肉本来のうま味がわかるというところだ。
彼女も、何度も何度も肉を噛む。
けれど、急に彼女の手が止まった。
ナイフを皿に置くと彼女は、眉間にしわを寄せた。
口の中の肉を、今度は優しく確実に噛み、静かに飲み込むと、彼女は右の頬を押さえながら、今度は照れくさそうに小さく笑った。
「こういうことなのかな?」
彼女はそう言うと、ワインに口を付ける。
『そうかもしれないね。』
僕は彼女の笑顔を見て小さく笑うと、彼女と同じようにワイングラスに口を付けた。
彼女のワイングラスには、赤い痕が残っている。
彼女はまた少し照れながら、それをまた指で拭った。
作品名:食事と血液の関係性。 作家名:Lhasa