イヤホン
私の部屋で寛ぐ時もTVはつけずに何かの曲を聴いている。
その耳にはいつもイヤホン。
たぶん彼は、耳に蓋をして直接音が流れてくるのが好きで、
スピーカーもヘッドホンもイヤホンには勝てないと思ってる。
「ねぇ?何聴いてるの?」
あなたの好きなその曲は何?
ポップ?ジャズ?ボサノバ?
ロックとかラップとか?
もしかしてクラシック?
気になる…
私も知ってるかもしれないじゃない?
好きになるかもしれないじゃない?
「聴いてみる?」
片方のイヤホンを差し出されたので、耳にはめる。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
無音。
「ねぇ?」
頭の外まではてなが表示されたまま彼を見上げる。
「ん?」
「何も聴こえない…?」
「聴こえてるよ?」
「???」
「おまえの声。」
一瞬なんのことかわからなかったけど、
理解できた時、私、顔が真っ赤になってしまった。
いつまで経っても音楽は流れてこない。
「いつも、こうなの?」
「一緒にいる時は耳にはめてるだけ。」
そう言って、見せてくれたMDプレイヤーには中身がない。
「…なんで?」
「音楽聴いてるフリしておまえの声聴いてるから。」
べつにフリなんてしなくても…
なにかこだわりでもあるとか?
「フリでもしてないと…面と向かってはまだ、照れる。」
付き合って3ヶ月…
まさか、こんなカミングアウトあるなんて予想もできず…
お互い茹蛸よりも真っ赤になってしまった。