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涙のわけ / 詩のようなもの

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     落書き

あるひ大学の便所に
しゃがんでおもむろに
ダップンしようとしてふと
目の前の壁を見ると

お前は詩人なんかじゃない!

という縦書きの落書きが
黒々と細字で書かれてあった

これはいったい
如何なるものの策略なのか?
或いはまた
誰かにあてた信号なのか?
しばらく私はたじろぎもせず
ダップンしながら
その意味する処を考えていた

お前は詩人なんかじゃない!

その言葉が頭の中を駆け巡って
しばらく何にも考えられなかった
ともすれば
ダップンするのも忘れていた

ダップンするのも忘れていた?
いいや 私は忘れていなかった
私はちゃんとダップンし終わり
丁寧に紙で拭いて
ズボンを上げてベルトを締めて
ぬかりなく手も洗い
のろりのろりと建物の外に出た

外は明るく 空に雲ひとつなく
行き交う学生等の声もして
涼やかな五月の風が吹いていた

そして私は・・・・・・

私はとても幸せだった!