涙のわけ / 詩のようなもの
空は今日
空は今日 気がふれている
雲がそしらぬ顔で流れていく
幼い少女が殺されたのだ と
埃まみれのテレビが言ってる
殺人者は心せよ あとになって
お前は決して反省などするな
心からの反省などするな
少女のために心からの涙を流すな
たとえお前のせいではない
不遇のためにお前が孤独になり
孤独は狂気の温床であり
狂気は時として凶行に走るとしても
われわれが捏造した神とやらに救いを求めてはならぬ
覚者とか呼ばれる禁欲者の慈悲とやらにも
そうして最期にお前は
世界中の怨嗟と無理解と好奇の視線を一身に引き受けて
死の待つ十三階段を昇れ
死の待つ十三階段を昇れ
死の待つ十三階段を昇れ・・・
に しても
空は今日 気がふれている
そして
窓のそとはあの世のように明るい
作品名:涙のわけ / 詩のようなもの 作家名:池本浩一