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青春探し

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episode1:2005年 7月20日 佐藤修平の部屋


「あー… 暑い…」
部屋の主は一人、そんなことをつぶやく。
現在の気象は東京都江戸川区では天気:雨 気温:21.5度 風速:1.1m 湿度:87% である。
これだけ湿度が高いと汗が乾かない。じっとりとへばりつく暑さだ。体感気温は21.5度なんかよりもはるかに高い。
現在夜7時。この日、修平は終業式の後昼食を済ませ代々木公園でさんざん踊っていた。さっき帰ってきたばかりなのだ。体力も底を尽きかけている。
「風呂…めんど…」
汗を滴らせるほどかいているのにそんな気力さえない。
もう寝てしまいたい。
晩飯もいらない。
とにかく寝かせてくれ。
そんなことをおもっていた。
その時、
修平の携帯電話が鳴り出した。
「ん…うぅ…」
ベットに突っ伏していた修平は枕もとの携帯電話を手探りで見つけ、自分の眼前に持ってきた。
目に入ったのは「斎藤 怜佳」の文字。
SNSアプリでチャットが来たのだ。

しゅーへい、今通話できる?
課題やるから付き合って!

はっきり言って面倒だ。もう寝たい。
しかし、まぁ通話だ。体は動かさなくていいし、好意を寄せる相手からの頼みなのだ。断ることはなるべく避けたい。

おっけー じゃ、かけるわー

プルルルルルルルル…という音の後、人の声が聞こえる。
「やぁやぁ」
そんな言葉さえ、聞くと安心する。恋とは人を惑わすものだ。
「よーす」
気の抜けた返事をする。
他愛もない話をする。
お互い笑いあう。
相手が分からない問題をたずねる。
それを解いて解き方を告げる。
相手はそれを聞いて感謝の言葉を口にする。
いつもの、やりとり。しあわせな、ひととき。
一度交際をして別れた相手なのに、自分でも不思議なぐらい自然に話している。
3年の月日というものは案外長かったようだ。幸か不幸か、“自然消滅”したというわだかまりはなくなっていた。


気付くと日ざしが修平を照らしていた。
まぶたを開ける。時計を見る。“AM 9:48”の文字。
携帯にはこんなチャットが残っていた。

寝ちゃったみたいだったから切ったよー
付き合ってくれて、ありがとー おやすみ(・ω・´)

修平は5割の嬉しさと5割の残念さを胸に、体を起こす。
今日からは夏休みだ。
彼にとって高校生活初めての夏休みが始まる。
作品名:青春探し 作家名:りゅー