見つけて
ふと王女を見ると、思いがけず顔を崩して笑っていて、それが一瞬泣いているように見えてしまい、思わずぎくりとしてしまう。そんな俺に構わず、彼女は大きく頷いた。
「そうだな、お前の言うとおりだ。……そして、お前と私は似ている。お前もとても冷静だ。私は、お前のそういうところが好きになったのだと思う」
だが、と王女は言った。遠くを見つめる目をしていた。
「だがたまに、自分で自分のこの性格が、とても嫌になることがある。お前は、違うのか?そんな気持ちになることはないのか?」
そうか、だからこんな貴方らしくないことをしたのですね。
どうでしょうかと、そう誤魔化すことも出来たが、やめておく。
今度は考えるまでもないので、すぐに応えた。
「ありませんよ」
あまりにはっきりとした俺の口調に、驚いたように振り返る王女。その視線を受け流しながら、俺は妙なすがすがしい気持ちで微笑んだ。
俺がここに来れないと思うのは、確かに悲しい。あなたが家出したと聞いたとき、無事にここにいることを願った。この場所にいなかったら、俺一人でも探すつもりだった。誰に望まれなくとも。
でも俺は口に出さない。決して。貴方が俺に言ってくれたことを、俺からは一生言いません。
そのことをいつか後悔するときが来るとしても、その隣に貴方がいるならば。
俺はそれでいいんです。
「帰りましょう、エリス様」
もう少し、ここにいたい。貴方と二人きりで。そう思う気持ちもないではないのに。
それでも俺たち二人は、帰るだろう。
それがお互いに、好きになった自分だから。
今度は手を取ったエリス様に、これが最後だと思いながら、俺はその手を握り返した。