CROSS 第5話 『忘れてはならぬ戦い』
第4章 穴があったら埋まりたい。
集合地点にいた兵士たちは、自分が隠れられるだけの穴を、姿勢を低くしながら必死に掘り続ける。
「予定では、この作戦は昼飯前に終わるんだとよ!」
「俺たちの命が終わろうと終わるまいと、どちらにしろ作戦は終わるさ! 結果はともかくな!」
兵士たちは、毒づかずにはいられないようだった。反逆的な発言だとも受け取れるが、上官である山口は聞かない振りをしてやることにした。
しばらくして、山口が腕時計に目をやり、まわりを見渡した。多くの兵士は、既に自分が掘った穴に身を隠せている。
その時になって山口は、佐世保がいないことにようやく気づいたようだった。佐世保がいないことに、山口は慌て始めたが、すぐに深呼吸をおこない気持ちを落ち着かせていた。山口はなんとか気を落ち着かせながら、右手に信号銃を持って立ち上がり、兵士たちのほうを向いた。
「残念だが時間だ。 各自、身を隠せ!」
山口はそう言うと、空に向かって信号弾を打ち上げた。
「山口さん! 今戻りました〜!」
信号弾が空へ打ち上がった直後、山口の目の前に、スコップを得意気に持った佐世保が現れた。今ごろになって戻ってきたのだ……。山口とまわりにいた兵士たちは呆然とした様子で佐世保を見ていた。
その時、信号弾が青い閃光を発した。その強い光に、佐世保は思わず目を覆う。佐世保の後ろでは、モビルスーツがバズーカを構え直していた。それを見た山口は、我にかえった様子で、
「何やってんだ!!! 伏せろ!!!」
そう叫ぶと同時に、佐世保に向かって駆け出した。彼女自身は、何が起きているのかわからない様子で、その場でオロオロしていた……。
ボシュン!!!
何か大きな物が発射された音が響いた。モビルスーツがバズーカを発射したのだった。バズーカから発射された大型ロケット弾が山口たちの近くにある防壁へと飛んできた。
そこでようやく、佐世保は状況に気づいたようだったが、まだ頭が混乱していたのか、伏せようとはせずにその場に突っ立ったままだった。ロケット弾は、既に近くに迫っていた。
その時、山口が佐世保の腕を無理やりつかんで、いっしょに身を伏せさせた。
二人が身を伏せた瞬間、ロケット弾が防壁に命中し、形容のしようがないほどの轟音や振動や爆風が、戦場中に響きわたった。二人はすさまじい爆風に吹き飛ばされまいと、地面にしがみついていた。
ロケット弾による攻撃で、防壁は向こう側へと崩れ始め、防壁の上に陣取っていた敵兵は、次々に地面へと落ちていった。こっち側に落下した敵兵は、あっという間に味方兵による銃撃で「蜂の巣」となった。
防壁は完全に崩れ、町へとつづく「道」ができ上がった……。
作品名:CROSS 第5話 『忘れてはならぬ戦い』 作家名:やまさん