夏!
あぜ道と言うのか
道端に小豆の莢か
大豆の莢か はちきれんばかりにぶら下がっていた
強い陽射しと、歩けば立ち上がる埃・・・
額から頬へ、そして首筋に伝う汗
カラカラに乾いた空気の中を山へ山へと突き進む
居ない方が良い
居ない方が良い
そればかりが心を占める
どれほど歩いたのか
陽は傾き始める
時折吹く風が一息させてくれる
たそがれる山中は熱い陽射しとうって変わって
おどろおどろしい
音の記憶は何も無いけれど
確か、煩い蝉のシャンシャンした雨音のような?
否、違う・・・
夏の陽射しに飛び跳ねて
我が世の絶頂と言わんばかりのあの時を、そ知らぬ顔で
今は息を潜めて静かに横たわる
強い陽射しの刺すような気配が煩わしい五月蝿さで
纏い憑いていたような
もう半世紀を越す過去の出来事
何しに行ったの?
死んでしまおうと思った
死ねば良かったのに・・・
可愛い声で放った言葉は、どこへ行ったのだろう
もう半世紀を越す過去の出来事