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雪割草

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〈31〉変わった趣味?



「腹減ったな…。」

そういえばわたしも減ってきたな。

「ご隠居はいかがです?」

「もう昼じゃの。しかし、何か食べに行こうにも店がないしの…。」

良いこと思いついた!

「少々、お待ちください。新助、ちょっと来てくれないか?
助さん、ご隠居のお相手頼むぞ。」



新助を連れ出した。

「なにするんです?格さん。」

「買い物だ。食材をな。」

「ご飯作ってくれるんですか?手伝いましょうか?」

「料理できるのか?」

「はい、仕込まれましたから一通りは。あまりうまくはないですけど。」

「すごいなぁ。」

「で、おいらは荷物持ちですか?」

「それもあるが、値切ってほしいんだ。いいか?」

「お任せください!」

口が上手い新助のおかげでかなり安く手に入れられた。

「ありがとな。金が浮いた。これ貯めておいて奈良か紀州でいいもの食べような。」

「やった!たのしみだ。」





「ただいま戻りました。」

「いいものあったか?」

二人で将棋をしていた。

「助さん、また負けてるのか?」

「まだわからんぞ。」

「格さん。昼を作ってくれるのかな?」

「はい。」

「あっ。負けた…あーぁ。格さんって料理できるのか?」

「一応はできる。口に合うか解らんけどな。」

普通に作れる。
婚約受けてから修行が厳しくなっていたから前よりうまくなったはず。


「そうじゃ。助さん、手伝ってあげなさい。料理が少しでもできれば早苗も喜ぶんじゃないかな?」

「そうですか?」


武家の男がやってくれるわけがない。
父上も兄上も上げ膳据え膳。
美味いも不味いも言わない。


「なにができるかな?」

隣に助三郎が来ていた。

「え?手伝ってくれるのか?」

「料理覚えて…あいつを、喜ばせたいなって。」

うれしい。
一応わたしのこと考えてくれてる。


「良いな早苗さん。そういうお相手で。」

「からかうなよ。」

「じゃあ、この野菜切ってくれ。」

「こうか?」

「上手いな。さすが剣が立つだけある。」

「関係あるのか?」

「刃物だからな。」


食事らしいものは作れた。
もっといい食材があればなぁ。
おいしいもの作って食べさせてあげられるのに。

「ご隠居、いかがですか?」

「うむ、うまい。これならお前さんと結婚したあと問題ない。のう、助さん?」

「…ご隠居!」

「ん?どうした?」

口を滑らせたことに気付いていらっしゃらない!
どうしよう…気づいたかな?

「格さん、嫁を貰わない気か?まぁこんだけ出来るならなぁ。」

ふぅ…
どうやらわかってなかったみたい。
やり過ごせた…


「…旨いか?」

「うん。いける。」

「…良かった。」

うれしい。
おいしいって言ってくれた。


「あっ。できましたか?格さん、おいらもください。」

「どうだ?食べれるか?」

「その野菜俺が切ったんだ。どうだ?」

「助さんも手伝ったんですか?…格さん、すっごく美味しいです!
毎日作ってもらいたいぐらいだなぁ。」

味にうるさい新助さんに褒めてもらえた!
やった。これからもがんばって作ろう。

「そういえば、早苗ってちゃんと料理できるのかな?ねぇ?ご隠居。」

「は?…まぁ、のぅ、そういう噂は、聞かなかったがの。」

「あいつ、趣味があんまり女らしくないから下手なんじゃないですかね?ははは!」

無性にイラっとした。
隠し味にカラシかワサビでも大量に入れとけばよかった。


「ん?格さん何怒ってる?あっ…今の事早苗に言うなよ。」

「言うわけないだろ。そんなどうしようもないこと。」


「はぁ。上手かった。また作ってくれよ。」

人のこと料理ベタと笑っておきながらおいしそうに全部食べて…
なんか、納得いかない。


「そうそう、料理指南もよろしく!」

「…助さん、本気で料理覚える気なのか!?」

「なんだ?いかんのか?」

「いや、男としては珍しいなって…」

「新助だってできるんだ。俺だってできるかも知れんだろ。」





「そうじゃ、これからの道のりで二人に相談したかった。
奈良によりたいが、どうじゃな?」

「奈良のどこです?」

「東大寺に行って大仏を見たいと思っての。上様からも寄進を頼まれた。」

「上様の命ならいたしかたないですね。どうだ?格さん。」

「行きたい!ご隠居、行きましょう!」

やった。奈良だ。東大寺だ。

「お前、仏像見るの好きなのか?」

「嫌いではない。ほかの理由でどうしても行きたい。」

「なんです?おいしいものですか?」

「またお前はそれか。今昼飯食ったろ?で、なんだ理由は?」

「鹿だ!」

ずっと前から、一回見てみたいと思ってた。
あそこにはかわいい鹿がいっぱいいる。
人に慣れてるらしいから餌もあげられる、なでることもできるかも!


でも、言った途端皆の眼が点になっていた。

へ?
わたし、なんか変なこと言った?


「…格さん、お前、動物好きなのか?」

「ダメか?」

「いや、俺も好きだからいいが。意外だなって。」

「そうです。格さん嫌いに見えるから。毛虫怖がってたし。」

「あれだけは、子どもの時からだめなんだ!あんな変な色でうねうねしたやつ…」

「よいよい。鹿と大仏を見に行こう。」




晩、早苗は夜中こっそり由紀とおしゃべりしていた。

「奈良に寄るらしいぞ。」

「じゃあ、おいしいもの食べましょ!」

「由紀も食い気か…」

「何よ、早苗は?」

「もちろん、鹿だ!かわいい鹿ちゃんがいっぱいいる!見たいなぁ。」

「…」

眉根にしわを寄せていた。

「なんだ?その顔は。」

「ものすごく、変だったわよ。」

「は?」

「そんな低い声で『鹿ちゃん』なんて言ってはしゃいでも。ちっともかわいくない。」

「別にいい。…わたし、どうせこの姿でも、可愛くなんかないし。」

「なんで自信ないの?モテてたでしょ?縁談もいっぱい来たって言ってたじゃない。」

確かにたくさん来た。
恋文を何人かに渡されたこともあった。

「…それはそうだけど。助三郎さまに、かわいいとかきれいとか言われたことない。」

「なんて言われたの?」

「変な顔だとか、男みたいなやつとか…。」

「当たってるわね。」

「どこが?」

「今、男だもの。格さん!」

「フン!」

「ごめん、ちょっと待ってみたら?そのうち言ってくれるわよ。きっと。」

「そうかな?」



「やっぱり、何か悩みあるわね…大丈夫?」

「わかる?」

「近頃、顔に出てる…。」

「聞いてくれる?」

「いいわよ。」

由紀に心配ごとを打ち明けた。


作品名:雪割草 作家名:喜世