われてもすえに…
一人は勉学、一人は仕事。
同じ小姓だった二人の行く先は変わった。
小太郎はその日、久しぶりの学問所と道場に行けたことでうれしくてたまらなかった。
学問も、武芸も、小姓の仕事中に怠らなかったせいか、余裕でついていくことができた。
久しぶりに会う友と先生に囲まれ、小太郎は幸せを噛みしめていた。
学問所で学び、道場で鍛錬。
二つが終われば友達との遊び。
以前とまったく同じ日常が戻ってきた……
……かのように思えが、そうはいかなかった。
その日の夕方、屋敷では真っ赤に燃える夕陽を見ながら、小太郎の主が立っていた。
後ろには、疲れきってやつれた喜一朗が乱れた裃のままへたり込んでいた。
彼は主が突然言い出した『わがまま』に猛反対した。
そのせいで、一番苦手な『くすぐり攻め』にあい、負けた。
そんな彼をよそに、主政信は笑みを浮かべて夕日に向かって言った。
「小太郎、待ってろよ!」