小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

盟友シックス! -現実と幻想の狭間で-

INDEX|9ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

第8章 戦慄の高松



夏休みも間近に迫る7月半ば
俺は部活をさぼり家でゴロゴロしていた
「なーんにもやる気しねーなー」
ふとつけたテレビではまだ竜の動き出していない東京や大阪では予断を許さない状況だがすでに被害を受けた京都や名古屋ではもう復興に向けて動き出しているというニュースをしていた
「なーんにもやる気しないけど嫌な予感だけはバッチリするんだよなー」
なんとなくの嫌な予感は的中し俺の携帯が鳴り響いた
「もしもし今すぐ来れる?」
「なーんにもやる気しないからパス」
「…日本を滅ぼす気?」
「じ、冗談だって! すぐ行くっ!」
俺は着替えて走り出した

「で、今回はどこで暴れだしたんだ?」
「電話の時とはえらい違いだね “なーんにもやる気しない”なんて言ってたの誰だっけ?」
「ちょっおまっ」
「へぇ…私が大急ぎで部活抜けてきたって言うのにいい御身分だねぇ」
長谷崎の視線が刺さる
とっさに俺は山村に助けを求める視線を送ったがそらされた
「…まあいいや 今回は高松だね サクッと一狩行っちゃおう」
俺たちはゲートをくぐった…

「毎度ながら無茶苦茶するねぇ向こうさんもさ」
町はすでにおおかた破壊された後で上空には竜が飛び回っていた
竜が噴きだしていたのは…水球
「俺今回パス」
「はぁっ!?何言ってんだお前!?」
すでにブラックモードに入った長谷崎がヤクザ口調で言ってくる
「俺泳げないし」
「なめたこと言ってたらブチ殺すぞコラァッ!」
もうこうなったら反抗したときに体の原型が残る保障はない
「すいませんでしたっ!」
「わかったらとっとと行けよボケッ!」
俺はさっさと走り出していた

「グワァッ!」
特に策もなく水に飛び込んでそのまま流されていた俺がさっさと捕まったことは言うまでもないだろう
(…くっ!)
水球の中で身動き不能の俺に鈍く光る十数本の牙を持つ口を開け竜が近づいてくる
(喰う気か!?くそっ!動けっ動けよっ!)
どれだけ焦ってもどれだけ念じてもなぜか体は動かない
(まさか…この水球に拘束魔法がかけてあるのかっ)
少しずつ巨大な口を開けた竜は近づいてくる
(もしそうならダメだな…俺の人生もここまでか)
竜は水球ごと俺を口の中に放り込んだ
その衝撃で水球が弾け俺は口の中に放り出される
「うわっ!」
ヌメッとした竜の舌に弄ばれ(もてあそばれ)体に絡みついてくる唾液が俺の感覚を奪っていく
「うっぅぅ…」
喉の奥の壁が開き大きな穴が姿を現す
今まで俺を弄んでいた舌は俺をその穴の方へと押し柔らかい肉が俺をゆっくりとそして力強く穴の奥へと押し込んでいく
こうなると生物の飲み込む力というのは強いもので抵抗することなどできはしなかった
(飲み込まれる…終わったな)
ゆっくりと胃袋へ落ちていきながら俺はそう考えた…

(胃袋に落ちた… 消化されるのも時間の問題だな)
真っ暗で何も見えない中胃酸が俺の皮膚に纏わりつき刺すような痛みを与えてくる
だが激痛というものではなくむしろ少し心地よく感じる程度の軽い痛みだった
(強酸喰らった時よりはるかにましか…)
俺は抵抗することもなく胃壁にもたれかかっていた
(何でなんだろうな…もうすぐ死ぬはずなのに、怖いはずなのにこうしていると安心を感じるんだ…)
胃壁と接している背中からほのかに伝わってくる竜の体温を俺は感じていた
(寒くない…暑くもない…痛くないって言ったら嘘になるけどこの暖かさを感じていると寂しさも感じない…こんな人生の終わり方もいいかもしれないな…)
俺はもう開けることもないであろう目を閉じた…

一方外では

「宮寺がいないっ!」
「多分一人で突っ込んで行ったから捕まったんだろう!」
俺は一気に竜との距離を縮める
「山村っ!一発撃ちこめるか!」
「厳しいっ!」
尾蔵の考えはだいたいわかるがまだ銃の射程からは遠い
「ちょっと待って!あれっ!」
長谷崎が指差した先には水球の中に閉じ込められたまま身動きのできない宮寺の姿だった
「まずいぞあれっ!」
俺は同時に宮寺に向かって口をあけながら近づく竜の姿も見つけていた
「喰う気かっ!?」
「宮寺っ!」
長谷崎がさらにスピード上げて突っ込む
「チクショーッ!間に合えっ!」
だが、俺たちは間に合わず宮寺は竜の口の中に放り込まれた
「宮寺ぁっ!」
長谷崎の叫びも宮寺には届かなかった
「まずいっ!早く救出しないと宮寺溶かされるぞ!」
尾蔵の言葉に寒気が走る
「宮寺をお前の栄養にする訳にはっ!」
俺は6発すべてを連射し竜にぶつけるも竜は宮寺を吐き出そうとしない
「腹突き破って吐かせてやるっ!」
尾蔵の突きも水によって威力を奪われる
「腹殴ったら吐くんじゃねーのっ!」
犬射が鞭を振るうもやはり水に阻まれる
「宮寺が喰われたのは私のせいだ…だったら、私の手で、吐き出させて見せるっ!」
長谷崎も背中側にハンマーを振り下ろすもやはり水の壁は破れない
「これなら…どう!」
来村が竜の周りの水を凍らせ、砕いた
「今なら…やれるっ!」
長谷崎は竜の背中にハンマーを振り下ろす
「せいっ!せいやっ!たぁっ!」
何度も何度も殴られる竜もたまったものではない
すぐに背骨が砕け竜は声を上げる間もなく息絶えた
「だいたい喰われてから20分…間に合うか?」
「とりあえず腹掻っ捌いたら(かっさばいたら)いいんだろっ!」
俺は刀に持ち替えて竜の腹目がけて振り下ろした

ズバッ!
肉の切り裂かれる音と共に俺は背中から外に放り出された
暗い腹の中からいきなり外に出されたので俺の視界は一瞬黒に染まった
「宮寺ぁ!」
「あ、長谷崎?」
視界が元に戻ったとき俺を見下ろしていたのは長谷崎や竜狩たち6人だった
「よかった…まだ生きてる」
長谷崎ががくりと両膝を折る
来村はすでに治療に入っていた
「ゴメンね… 痛かったでしょ?苦しかったでしょ?怖かったでしょ? 私が無理に行かせたから… ゴメンね…本当にゴメンね…」
長谷崎にブラックモード中の記憶があるだけでも驚きだがそれよりもっと驚いたのは長谷崎が泣いていることだった
長谷崎は俺が小学校一年の時からほとんど同じクラスだったが彼女の涙を見たことはなかった
「宮寺が喰われた時生きた気がしなかった…竜の牙が何本も宮寺の体を貫いてだんだんだんだん血だらけになって…宮寺が肉片に変わっていく所とか苦しみながら溶かされていく所とかが頭の中から離れなくなって…だから、だから生きててくれてよかった…」
俺は静かに体を起こした
「大丈夫だ…あいつは俺に噛みつかなかったし胃酸もそんなに痛くなかったからな」
「宮寺ぁ…」
長谷崎が俺の胸に飛び込んでくる
「今は泣けばいい…俺はここにいるんだから」
胃酸でぼろぼろになった服の上から長谷崎の温もりが伝わってくる
震えている長谷崎の肩に俺は静かに手を回していた…

「とんだ災難だったね」
泣き疲れ眠った長谷崎を家の前に降ろして竜狩が言う
「ああ、まさか喰われるなんて思っても見なかったよ」
俺も歩きながら答える
「竜に喰われても生きて還る… 不死身みたいでいいじゃない」
「まあそんなに悪い環境じゃなかったぞ? 溶けるっていう状況抜きなら」
「そういうポジティブなの嫌いじゃないよ」
「まあ喰われてみろって」