甘い果実
ドロドロの甘い果実を摘み取って
乾きに飢えた女は、もうどうしようもなく
口いっぱいにそれをほおばる
じわりと広がる、重ったるい甘み
吐き出してしまいたいのに、吐き出せない
飲み込もうとしても飲み込めない
あまりの苦しさに、目の前がぐらりと揺れる
きっと悪いことをしたからだと女は思う
罰が当たったのだと
甘く重くふくれあがった果実を口いっぱいにして
女はどす黒い涙をだらりと流し
どうにも始末できない自分の過去を
ただただ悔やむ
もうやり直しはきかない
ただの一度っきりしかないのだ
後悔に満ちた祈りをただひたすらに唱え
天を仰ぐと
堕ちてくる刃のごとき陽の光が体を突き刺す
ここで息絶えるべきか
あるいは、希望の光を求めて手を伸ばすべきか
答えはひとつ
自らを騙してさえも、生きる人間の愚かさ、美しさよ
前に進むほかないのだ
この世に生まれし、強き生命