桜、恋降る
声に出せない・・・出してはいけない想いが、思わず溢れる。
好きになりすぎて、その気持ちの行き所が無くなったら・・・あたしは、
どうしたらいいのだろう?
何処に・・・この気持ちを捨てたらいいのだろう?】・・・・・・
「はぁ~っ・・・いいなぁ、切ない~!麻朝と涼くんの恋、
どうなっちゃうんだろ?」
「まぁたそれかよ?真綾、口開けばいっつも『桜恋』だよな」
前見ないとまた転ぶぞ、なんていって嶺太はいつもの呆れ顔だ。
「ひっどーい!転ばないよぉっ・・・ひゃ、わぁっっ」
「・・・・・・・・・だからいっただろ」
案の定、大きな音を立てて転んでしまった真綾を、口ではそういうものの、
嶺太は優しく手を差し延べた。
・・・昔から、だ。無愛想だけど、すごく優しい。
そんな嶺太が実は、好き、だったりする。
幼なじみで、ずっと友達だったから、
そんなこと絶対言えっこないけど、でも・・・・・・
こっそり想うくらいなら、・・・いいよね?
実は『桜恋』は、話も泣けるから好き、というのもあるけど。
「まあさ」と「まあや」、「りょう」と「りょうた」・・・
名前が似ているから、読んでいる、なんて。
二人をあたしたちに重ねて読んでいるのは、
あたしだけの秘密なんだ。
作品名:桜、恋降る 作家名:うさぎtyocolate