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彼岸花

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宙を舞うあの白球が
いたいけな芽に影を落とす前に

闇を裂くその一筋が
乾いた表面を流れ去る前に

走り抜けてしまえばいい
本気でそう思っていた

喉を震わすこの波が
冷たい部屋の中 反射するのなら

いっそ閉じ込めてしまえばいい
本気で
そう、

見つめ返さない君の水晶を
叩き割ることもできない僕は
代わりにあの子の手を握る
すべてが欲しいわけじゃなくて
ただ一言、必要だったのは
軽蔑の言葉。

頬を伝うその一滴が
温かな包容に甘んじる前に

口を縫うこのためらいが
たおやかな指に安堵する前に

もがき苦しんでいる僕の心臓を
握り潰そうともしない君は
代わりにあいつを突き刺した
すべてが欲しいわけじゃなくて
ただ一言、必要だったのは
痛烈な否定。

空を舞う僕の想いが
鮮やかな花弁と成り果てる前に

手を差しのべられていたならば
何か変えられたのかもしれない

なんて考える僕の脳髄を
嘲ることすらできない僕は
未だに君を眺めているの

すべてが欲しいわけじゃなくて
ただ一言、必要だったのは
軽蔑の言葉。

「ねえ、早く僕のこと見下してよ」
君はただ風に揺れてる
僕はもう取り戻せない
作品名:彼岸花 作家名:遠野葯