子供の将来
まだ焼き足らないカルビをせわしなく裏返しながら浩司が呟いた。
「せやね。隣の角さんの経営する駐車場でも、集まってたらしいわ」
別メニューの煮魚を、義理親達に出しながら真奈が相槌をうった。
「なんや母さんら、また別メニューかいな? 真奈が毎日大変やんか」
「私はともかく、父さんはコレステロールを気にしてるんや。」
浩司のボヤキを節子が軽く受け流した。
「そらそうですわ。お父さんにはDHAが豊富な青魚が健康にええんですよね」
笑顔で同意を求めた真奈に対して、
「だいたい私らはそのニンニク臭いキムチが嫌いなんや。そんでもって真奈さん、この味噌汁、ちょっと少し塩からいんとちゃう?」
節子がニコリともせず、そう切り返した。
健康を気にされている父、浩太郎は新聞に目をやって押し黙ったままだ。
「それにしても、ぶっそうな街になったもんやなあ・・・」
息苦しさを感じた浩司が話題を元に戻した。
「最近は小さい娘を狙う変質者もおるて聞きましたわ・・・。北村さんの美紅ちゃんも狙われはってんて・・・」
真奈が声を潜めて言った。
「あの子は3歳か・・・それやったら、うちの美宇も危ないんとちゃうか?」
「まあ今のところは大丈夫やけどね、美宇はまだ6カ月やから・・・」
奥の間でスヤスヤ眠る美宇に目を細めながら真奈が笑った。
「けど良い環境で育てるのは大事やからな。今から真剣に考えとく必要はあるな」
「そらぁ、そやね。やっぱり美宇にはのびのび育って欲しいもんね」
「ほんだら明日、会社帰りにでも不動産屋に寄ってみよかな・・・」
とんとん拍子で進む、いささか芝居がかった二人の会話に節子が割り入った。
「フン、私らと別居したいからて美宇をダシにしてからに・・・、あの子はネコや(!)っちゅうに!」
(※・・・・・・美紅ちゃんもネコです)
――― おしまい ―――
作品名:子供の将来 作家名:おやまのポンポコリン