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食物連鎖

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 少女は無邪気に聞いた。
 これはなあに?
 魚さ。そんなことも知らないのかい
 知ってるよ。だけどこのお魚、脚が生えてるじゃない。食べられるの?
 食べれるだろうね。でも、気味悪くて食えやしないさ。
 じゃあ、どうして持ってるの?
 珍しいからね。みんなに自慢できる。
 自慢するために、イノチサマを犠牲にするの? 怒ってらっしゃるよ。

 これはなあに?
 鳥さ。そんなことも知らないのかい。
 知ってるよ。だけどこの鳥さん、翼が無いよ。飛べるの?
 飛べないだろうね。これで飛べたら、気持ち悪いよ。
 じゃあ、どうして持ってるの?
 珍しいからね。みんなに自慢できる。
 自慢するために、鳥さんの意思を無視するの? かわいそうよ。
 君がかわいそうなんて思ったら、この鳥さんがかわいそうだ。
 どうして?
 君の方がよっぽどかわいそうじゃないか。今から俺に食われちまうんだからさ。
 ふうん。

 あなたはなあに?
 獣さ。そんなことも知らないのかい。
 知ってるよ。だけどあなたは、わたしとお喋り出来てるよ。どうして?
 それは、きみとお友達になるためさ。
 へえ、それは御免ね。獣とお友達になるシュミはないわ。
 おやおや、そんなことを言っていいのかい。釣れないな。


 釣る? わたしはお魚じゃないわ。

 わたしはなあに?
 人さ。そんなことも知らないのかい。
 知ってるよ。あなたなんかとは違うのよ。
 どう違うんだい。
 醜くないわ。
 そうかい?
 だってあなたは、いろんなものを食べてしまうわ。
 きみは食べないのかい。
 でも、そんなにむしゃぶりついたりしないよ。
 モノを食う時にかわいそうだなんだと思うと、そいつにとり憑かれちまうよ。
 やあね、こわい。
 人もまあ、いろんな情がでてきたもんだ。旨い旨いと物を食うのは、おもしろいとは思うがね。
 あなたには情が無いの?
 昔はあったさ。だけどね、俺もとり憑かれちまったのさ。今じゃあ獣だよ。
 わたしも獣になるのかしら。
 俺がきみを食ったら、きみはどう思う。
 わたしってかわいそうね、って思う。
 じゃ、きみもいつか獣になるさ。
作品名:食物連鎖 作家名:長谷川