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きみにありがとうがいえなくて

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<章=再会~伊織~>
 蝉が鳴く蒸暑い日だった。

 親友の涼と俺は自慢の真っ赤なFJクルーザーにエンジンを掛け待ち合わせ場所のコンビニへと向かう。
自慢と言ってもそれほど車が好きなわけではない、まぁ嫌いでもない。
ただ単にこの車は意外と女ウケがいいただそれだけだ。
「今日の女の子はどんな子?」
涼の質問に素っ気なく答える。
「知らん。写メ待ち。」
涼はいつもの様に会話を続けた。
「条件は?」
「イケメンなら本番有りの1万5千で、不細工はデートのみ1万円。」
ようは援助有りの出会い系だ。
俺らは今これにハマってる。
正直21歳の青年にしては金はあるほうだ。むしろ自分たちの親父より金はあるだろう。
俺と涼は19歳の時二人合わせた夏のボーナスをFXに注ぎ込んだ。元金は二人合わせて50万。
この提案を出したのが涼。
この時失敗してれば今も工場で日勤と夜勤の繰り返しをしてたわけだが、もともと高校生の時から為替に興味をもっていた俺がコツコツ勉強したかいがあって何とか成功した。
成功と言っても俺らは1日10万儲けが出ればその日はトレード終了のルールを持っている。逆に1日10万損が出てもトレードはやめるようにしている。
単純計算毎日勝てれば10万×20日としたら月200万。まぁそんなに儲ける月はないが。
そうこうしてるうちに写メが届いた。
「涼写メ来たぞ。」
「見して。」
涼が俺の携帯を取り上げ先に見る。
「二人ともかわいいぞ。」
「マジか?見してみ。」
携帯の画面を見て正直驚いた。
知ってる顔だ。
「なぁ涼、俺こっちの子でいい?」
「いいよ。でも珍しいじゃん。伊織が先に選ぶなんて。」
当たり前だ。知ってる顔は中学の後輩で正直惚れてた相手だからだ。
惚れてた相手が涼の相手なんてありえない。
後輩と言っても5歳年下だが、俺が高校3年の時に卒業した中学のサッカー部を教えてた時期がありそこで少しだがしゃべるようになり、進路の相談や恋愛相談に乗っていた。社会人になり疎遠になったがこんな形で再開するとは。
「まぁ、昔惚れてた子に似てたもんでね。やれるもんならその子でも思い出しながらやりたいじゃん。」
涼は笑いながら、
「やだねぇ男は。昔の女が忘れられない生き物で。」
「うるさいわ!自分こそ元カノ引きずってるくせしたて。」
こいつは未だに巨乳だった彼女が忘れられないでいる。

 車が待ち合わせのコンビニについたところであらかじめ聞いていた番号に電話をいれた。
3つ目のコールで相手が電話にでた。
「もしもし。」
まさかのあの子だった。
「もしもし掲示板の子?」
「はい、そうです」
「今外に赤い四駆止まったでしょ?その車だから。」
「わかりました。」
事務的な会話の後に女の子2人が出てきた。
出てきたのを確認して俺らも車から降りた。
「こんにちわ。」
涼がニコニコのスマイルを振りまいた。
このニコニコは女の子がかわいいからではない。
自分の担当が予想以上の巨乳だからだ。
俺は少し不愛想に、
「2組に別れよう。どーせ割り切りだから俺君ね。」
あの子を指名して、
「涼ちゃん、この車使っていいよ。」
そう言って車のカギを涼に放り投げた。
「マジで。お前らどーすんの?」
「そこでとりあえず飯食ってくわ。」
「了解。」

 2組に別れた後俺らはファミレスに入った。
「ども、久美です。」
俺に気付いてないんかなぁと思いストレートに、
「今日は久美ちゃんがいい?それともいつもみたいに愛奈って呼ぼうか」
久美・・・いや愛奈はぽかーんとした顔をして俺をまじまじ見ていた。
「伊織さん」
「せーかい!!」