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ものがき

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 わたしの友人の女性が、数日前から行方不明になっていた。
 理由は特に聞いていないし、気にもならない。その程度の友人だった。友人というより、知人と言った方がしっくりくるかもしれない。
 その友人は、怪談なるものを書いていた。
 彼女曰く、あたしにほんとの話が書けると思う? そんなわけないよお。つくり話ばっかり。……だそうで。素人のわたしから見ても、そんなに上手いとも巧いとも言えない話ばかりだった。まあなんというか、書いていて本人が楽しければそれでよかったんだろう。
 そんな大して仲がいいわけでもないわたしが、彼女の部屋を訪れている。
 正直に言ってしまえば単なる興味本位というやつで、突然行方の知れなくなるような女がどんな暮らしをしているのか、なんとなく気になっただけだ。単なる野次馬心で、決して心配しただとかそういう気持ちは湧いていない。
 郵便受けの中に手を突っ込み、鍵を取り出す。泥棒が入り放題だろう、これは。盗むものもないだろうが。
 部屋に入ると、むわっとしたあつい空気が押し寄せる。なんてまずい空気だろうか。吐きそうだ。以外にも、部屋はとても片付いていた。ちくしょう。期待が外れたか。なんだよ、つまんねえな。発狂したあととかあったら面白かったのになあ、なんて思うが、さすがにそれは聞かれるとぶん殴られそうだ。殴る相手はいないけれども。
 あまりに整然とした部屋で、ぽつんと机の上に置かれたパソコンが、電源を押して御覧ヨ、なんて呼びかけてきそうだ。気味が悪い。まあ、どうせそういうコトを目的に来たのだから、調子に乗って電源スイッチを押してみる。
 ファイルをしばらく漁っていると、テキストが詰まったファイルがあった。そこには、明らかに嘘臭い怪談が書いてあった。
 そんなもんさ。
 下手をすれば、わたしが今綴っているこの話も、つくり話かもしれないじゃないか。
 わたしはパソコンの前で、マウスを操作しつつ笑った。
作品名:ものがき 作家名:長谷川