ツイン’ズ
その声に私は、はっとして身体を動かそうとしたが手足は固定され身動きができない。仮面ライダー? 改造手術? そんなことが頭に過ぎる。そして、このネタはどのくらいの人にわかってもらえるのか?
しかし、どこだここは、妙に機械チックな部屋なのはわかる。しかも、訳のわからない液体の入った瓶が戸棚にびっしり並べられている。まさかここは、学校のどこかにあると噂される、学校非公認の『妖弧ちゃん研究室』!?
ふと、横に目をやると直樹が寝てる。気持ちよさそーな寝顔してるなぁ、とか思った。早く目を覚ませよ、寝起きの悪い私ですら、この緊急時でおめめぱっちりなんだから。
白衣を着た妖孤先生が私の方に近づいて来る、もうダメだ殺される。たぶんホントに殺されるんだって。
「こっちがナオキちゃんの方よね」
そう言いながら妖孤先生は私の胸にタッチした。
「あん」
思わず、私は変な声を出してしまった。私って敏感肌なのか?
「顔が同じだからわからないのよねぇ」
「だからって、胸さわることないじゃないですか!」
「ナオキちゃんの胸結構大きいわね」
「そんなことないですよぉ……」
って照れてどうすんの私。
私の胸から手を離した妖孤先生は白衣をきびすとなにやら操作パネルっぽいものを叩き始めた。テキトーに叩いているとしか思えないほどの華麗な動きだ。
「さぁて、そろそろ、始めましょう」
「何を?」
「実験」
実験っていう言い方が妙にひっかかる。やっぱり、私の運命モルモット? 悲劇のヒロイン?
操作パネルを叩きながら妖孤先生は大きな声を張り上げた。
「タロウくん1号2号、こちら様とあちら様をあの機械に入れちゃって」
タロウくん1号2号とは玉藻先生の作り出したロボットで、見た目もいかにもロボットって感じで、学校でも彼ら? の存在は有名なのです。
「は、放して!」
私はタロウくん1号に無理やり訳のわからない機械の中に入れられそうになった。
「せ、先生なんですか、これ?」
「その機械はあたしが30分で作り出した、二つの物を一つにしちゃう機械よ」
私昔こういうのでハエと人間がいっしょになっちゃった映画見たことあるんだけど……そんなことを考えたらスゴク怖くなって、全身に鳥肌が。しかも30分は短いでしょ。
「せ、先生、失敗してらどうしてくれるんですか!」
「その時はその時で」
「そんな無責任な」
横を見ると直樹も私同様、こっちと同じ機械に……ってなんであいつまだ寝てんの?
そんなことを考えてるうちに私は変なカプセルの中に入れられていた。
「わぁー、出してー!」
「さぁ、準備は整ったわ。スイッチオン、ポチ!」
妖孤先生は勢いよくこの機械のスイッチと思われるボタンを押した。それと同時に機械は凄い音を立てながら起動し始める。
「さぁて、後は3分間待つだけね。タロウくん1号オレンジジュース買ってきて」
その時だった、辺りが突然闇に包まれたのは――。私と直樹を入れた機械の音が次第に小さくなり、そして止まった。――停電だった。
「あっ……」
妖弧先生はそう小さく呟くと、
「タロウくん2号急いでブレーカー上げて!!」
電気はすぐについたのだが……?
「タロウくん2号、まずはこっちを開けるわよ」
妖弧先生はそう言うと、私の入ったハッチに手をかけて、力を込めたが開かない。
「タロウくん2号開けて」
タロウくん2号は見事ドアを壊すことに成功。
「だいじょうぶ」
私は妖孤先生に肩を揺さぶられるが、意識が朦朧として返事を返すことができない。
「まさか、死んじゃったのかも!」
真剣な眼差しで、妖孤先生は私を見つめている。
でも大丈夫、死ぬなんてあり得ないから……。なぜなら簡単、直樹&私はこの物語の主人公だから。
「ナオキちゃん、このあたしの調合した薬を飲めば死者だって生き返るわ」
ダメ、そんなの飲んだらきっと死ぬ。そんな危ないクスリ誰が飲むもんか。
でも、身体の動かない私は成す術もなく口を強引に空けられてそのクスリを……。
そして、一瞬私の意識は遥か彼方まで飛んだ――。
頭がイタイ、クラクラする……。
「……う、ううん」
「だいじょうぶ、ナオキちゃん?」
私を誰かが呼んでいる……妖孤先生? 視界がぼやけてよく見えない。そうか、変な機械に入れられて……。
「は〜っははは、わかったぞ、今すべてがわかった」
「どうしたのナオキちゃん!?」
「おぉ、これはこれは、妖弧嬢ではないか、ううん美しい、さすがは我が学校一の美人教師」
私は妖弧のあごにに手をやり、彼女の顔をまじまじと見つめた。
「あぁん照れるわぁ、ってナオキちゃんどうしたのなんか変よ」
私は全てを悟った。私が二人に分裂した理由、そして私のすべきことが。
「私はこの世界にいる全ての女性を手に入れなくてはならない、そのためにここに世界征服を宣言する」
「えっ?」
なぜだかはわからないけれど、私はとにかく世界征服をしなくてはならない。そんな気がする。気のせいだったら取り返しがつかないね。
「ナオキちゃん……失敗だわ、実験」
「案ずることはない、これが本来の私なのだ。という訳でまずは君に私のモノになってもらおう」
――私は妖弧の身体を抱きよせ、唇と彼女の唇を重ね合わせた。妖弧は突然のことになにが起こったのかわからないでいる。
これで妖孤と私は運命共同体だ。
俺はわけのわからん機械の中で目を覚ました。……どこだよここ?
玉藻先生に注射器でプスッてとこまでは覚えてる。
まぁいい、とにかくここを出なくては……って開かない、このドア開かねぇぞ。
しかたなく俺はドアを思いっきり蹴飛ばした。ドアは俺の蹴りによって案外簡単に開いた。さすが俺、伊達に昔サッカーやってたわけじゃない。……てゆーかいつの話だそれ、小学校の話だろ。
俺は変な機械の中から這い出た。身体が重くて這って出ることしかできなかったから。
機械から出た俺は周りを見渡した。な、なんとそこには信じられない光景が!?
変な機械から出た俺を待ち構えていた衝撃のシーンとはいったい!?
……俺’と玉藻先生のキスシーンだった。
俺は思わずこの襲撃的シーンを目撃し目を丸くしてバッっと立ち上がった。
「おまえら何してんだ!?」
って言って二人に指さしてやった。
「おやおや、私にしては早いお目覚めだな」
俺’が玉藻先生の身体から手を放すと彼女の身体はバタンと床に倒れた。
そして、俺’は俺のまん前まで来て、右手で俺の頬に軽く触れた。かなり近い距離なので俺’の胸が俺に当たる。デカイ……てゆーか俺に感じてどーすんだ。
「やはり、さすがは私、綺麗な顔をしている」
俺’はいきなり俺を突き飛ばしやがった。思わず俺はしりもちをついちゃったじゃないか。
「何するんだよいきなり!」
「私は今から世界征服をしなくてはならないのでな先を急ぐ」
「はぁ? おまえ頭だいじょぶか?」
「この女は貰っていく」
そう言って俺’は玉藻先生を担ぎ上げた。結構力持ちだ。そんなことを考えてるヒマじゃない、これはたぶん緊急事態だ……きっと。
「ま、待て!」
作品名:ツイン’ズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)