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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ツイン’ズ

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 ちょっと強く返しちまった。これじゃー認めてるのと同じじゃんか。
 玄関のほうでドアの開く音がした。
「ただいま〜」
「あ、お父さんだ」
 遊羅がいち早く反応し玄関へ走って行った。そして、少し経って遊羅が親父と腕組みしながら俺たちの前に帰っきた。
 親父と俺らとが目を合わせる。眼鏡の奥の目が徐々に開かれていく……。
「直樹!! おまえ双子だったのか!?」
 家族揃って同じ反応……親なんだから、双子かどうかぐらいわかるだろ。
 俺と俺’は顔をしかめながらも同時にうなずいて見せた。話がそれでまとまるなら別にいーか。
「そうか、双子だったの!? でどっちがどっちだ?」
「俺が直樹」
「私が直樹」
「二人とも直樹っていうのか偶然だな。でも、呼ぶときに困るな」
「こっちが俺’」&「こっちが直樹♂」
「よし、こっちが直樹1号でこっちが直樹2号だな」
 なんだよその呼び方。しかも俺が2号かよ。
 ピンポーンっとまたもチャイムが鳴った。これ以上誰が来るんだ?
 ガチャっと勝手にドアが開けられ、黒ずくめの人たちっていうか黒子が荷持つを持って乗り込んできた。その後ろから鏡花さんが!?
「みなさんこんばんわ」
「……なんスか?」
「愛様から鍋の材料が切れたので持ってくる様に言われましたので、お届けに参りました」
親父が目を丸くして鏡花さんの肩を掴んだ。
「何ぃ〜鍋だと!」
「日本各地の厳選素材をご用意致しました」
「それは本気って書いてマジか! こうしてはおられん、鍋と聞いてはこの鍋奉行が黙っていられるかっ!!」
 親父はそう言って戦場へ向かって行った。鏡花さんも続いて頭を下げると黒子の一団と行ってしまった。
 なんか騒がしい夜だな。でも楽しきゃいいか。
「お姉ちゃん早くお風呂入ろーよ」
「あ、そうだった」
 あ、そうだった。俺もトイレ行こうとしてたんだった。
 ――なんか、この日はみんな騒ぐだけ騒いだ挙句、疲れきった表情で帰って行った。でも、みんないい表情してたよな。

 ――数日後。
「直樹、また直樹♀が校内で暴れているぞ」
 俺が教室で机の上で寝ていると愛が声を掛けて来た。それも最悪の内容だ。またあいつ暴れてんのかよ。
「どこで暴れてんの? 連れて行ってくれるか?」
「ついてこい」
 学校消失事件から3日で学校は再建された。この驚くべきスピードを実現したのは愛のバックに付いている大きな力による所が強い。
 なんだかんだで俺と俺’は双子って設定で落ち着いて今じゃ同じ学校に通ってるんだが……やっぱその設定には無理があって、直樹クーロン人間説とかいう噂が流れて、うちの学校の七不思議がいつの間にか八不思議になってたりする。
 俺’のこの学校での人気は上々で登校初日からファンクラブができたくらいだ。女子生徒にも人気が高いけど、やっぱりファンの大半は男みたいだな。でも、あの顔って俺だぞ、顔と性格がちょっと違うだけだろ。
「あぁ〜、今日もハデにやってんな俺’は」
「早くどうにかしろ」
「どうにかしろって、いつもなんで俺が処理しなきゃいけないんだ」
「生徒会の仕事の一環だ。それにあれの扱いは直樹が一番手馴れてるだろ」
 ったく、ここんとこ毎日だ。
 俺’は玉藻先生のクスリを飲ませれて変になって、また玉藻先生のクスリで元に戻った。……かと思われたんだが、たま〜にっていうか、ここんとこ毎日だけど、発作が起きるらしくって……。
「は〜ははははっ、直樹♂よくきたな、待っていたぞ。今日こそ決着を付けようではないか!! この勝負で勝った方が世界の王者として君臨するというのはどうだ?」
 医者(保健室の先生)がこの特殊なビョーキに付けた名前は『世界征服強迫観念症状』。漢字が羅列して実に読みにくい名前だ。
「俺’いい加減にしろよ! 授業が潰れるのはいいけど、毎回毎回おまえの相手しなきゃいけないのは俺なんだぞ」
「それはそっちの都合だ」
 ロケットランチャー!? 俺’はどこからともなくロケットランチャーを取り出すと肩に担いで俺に照準を向けた。
「なんでんなもん持ってんだ!?」
「妖狐先生が貸してくれた」
 だから、なんで玉藻先生はそんなもん持ってんだ。いつか見たステルスとかあのロケットランチャーとか……戦争とかする気か?
「は〜ははははっ、そんなわけで直樹♂よ、さらばだ!!」
「本気で撃つ気か!?」
 ズドォォォン!! ロケットランチャーが火を噴き窓ガラスが大量に割れる音がした。
 ……死ぬかと思った。寿命は確実に縮んだ。
「なんたることだ間違えた。こっちが前だったか」
 こんな近距離で撃たれたら死んでたぞオイ。ロケットランチャーの前と後ろを間違えるっていう初歩的な間違えをしてもらって助かった。
「いったい何の騒ぎだ!」
「どうしたんですか!?」
 この騒ぎ二人の教師が駆けつけて来た。最初に来たのはベルバラことフェイシングが得意な体育教師の伊原尚美[イバラナオミ]先生。その次に駆けつけたのは古典教師の阿倍野聖明先生。てゆーか、この二人すでに戦闘態勢だし。
「は〜ははははっ、世界征服を目論むこの私に刃向かう気か。よかろうこのロケットランチャーで塵にしてくれよう」
 俺’はロケットランチャーを正しく構え直すと発射ボタンを押した。
「ま、待て……」
ズドォォォン!! ドゴォォォン!! 学校の一部が脆くも崩れ去った。
 そう、最近いつもこんな感じだ。もうひとりの俺が現れて以来苦労のない日はない。
 ホントにあの時の決断はよかったのかと今になって後悔している……けど、家族も友達もみんなあいつが来てから前より楽しそうな顔してるよな。やっぱよかったのかな……。まだ死者は出てないからな(苦笑)。
「は〜ははははっ、今外したが今度は外さんぞ!!」
 ズドォォォン!!
 前言撤回だ。俺の決断は間違っていた。
「ふざけんな俺’!! 今日という今日は許さんぞーっ!!」
「……ばかばっか……クスっ」

 おしまい