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イデアル/ヴァーフォルゲン

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朝、何時も通りの通学路、決まった日常。もう繰り返しすぎて飽き飽きした日常。
そんな日々をもう何年繰り返したんだろう。
はじめは楽しかった。でも、それが当たり前になると楽しくなくなる。
そんな事を何回繰り返したんだろう。
ふと、目の前に居た小さい少年を見たときに、小さい時に心から願っていた夢を思い出す。
「僕の夢は、皆が平和に暮らせる世界です!」
我ながらふざけた夢だと思う。
でも、アニメや特撮のヒーローに憧れていた無垢な少年はそんな叶えられる筈も無い夢を平然と言う。
昔の自分の馬鹿さ加減に苦笑しながら腕時計に目をやる。
時刻は8時5分。学校には余裕で間に合う時間だ。
だから、あの少年と少し話をしよう。
こんな事を思ったのは飽きた日常を少し変えたかったからなのか、それとも昔の夢を思い出させてくれたことにたいする感謝なのか。
そんなのは解らない。
唯、あの少年と話をしたくなったのは事実だ。
少年に声を掛けようとした瞬間。
後ろからトラックがクラクションを鳴らしながら走り抜ける。
トラックの先にはあの少年。
距離は5メートルほど。
走る。唯我武者羅に、愚直に、真っ直ぐに。
少年を突き飛ばした直後に視界は閉じた。
でも、視界が閉じる前に少年が口を開く。
「行ってらっしゃい。理想を追い求める哀れなおにいちゃん。」
グシャッと嫌な音が響いた。

目覚ましの機械的な音が部屋に響く中、叫んで飛び起きてベッドから落ちる。
落ちた衝撃に頭を抱えながら悶絶する。
やがて立ち上がり辺りを見回す。
自分の部屋。何年も前から使い続けた部屋。
暫くして部屋の扉が開いた。
「兄さん、起きてますか?」
扉を開けたのは妹の楓だった。
「どうしたんですか?具合悪そうですけど・・」
楓を心配させたくないからここは正直に話そう。
「嫌な夢を見たんだ。それも自分が死ぬ夢。」
「そうなんですか。でも良かったですね。夢で、」
確かにそうだ。夢でほんとに良かった。
でも、何故か現実味あふれる夢だったのは何故だろう?
「もうすぐ学校に行かないと遅刻しますよ?」
楓の言葉を聴いて目覚ましに目をやる。
確かにこのままだと遅刻する。
急いで支度を済ませて玄関に行くと楓はもう学校に向かったようだ。
だから急いで学校に向かって走り出す。

青年が走り去るのを見ていた少年が居た。
「さあ、お兄ちゃんは合格できるのかな?」
少年は不気味な笑みを浮かべると共に音も無く消えた。