「秘事は冬の真夜中」~天使の羽のヴァニス / 野原の書より
その日以来。
ディディカは陽が昇ると樹氷の枝に寝そべり、夜は枝を降りてケリダを待ちます。
そんな日が、幾日も幾日も続きました。
ただ、そんな生活はディディカのカラダを蝕んでゆきました。
元々寒さに弱い南の猫であるにもかかわらず、昼とはいえ長いあいだ冬の寒さに晒されるのです。
そして、何より枝の上にいる彼には餌を取る事が出来ませんでした。
寒さと空腹に、次第に痩せ衰え、力を失くしてゆくディディカ。
それでも、彼は決まったように昼には樹氷の枝に昇って太陽の光を遮り
夜にはケリダの寂しさを癒すように共に時間を過ごしました。
作品名:「秘事は冬の真夜中」~天使の羽のヴァニス / 野原の書より 作家名:ヴェリール