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吹雪

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市道から右に曲がると緩やかな坂道が続いていて、そのむこうはすぐに低い山でした。
その山を裏山と呼んでいました。
自分で名づけたのではないと思います。大人がそういっていたので私もそう呼んでいました。
坂道のちょうど真ん中には、大きな木が立っていました。
幼い頃の記憶ですから、正確ではありませんが、とても立派で大きく見えました、いま思うと枝ぶりが均等に広がっていて三角錐の形をなしていたと思います。
道の真ん中、不自然な言い方ですが真ん中なのです。
一本道がその木を境に左右に別れ、また、合流しているのですから、真ん中に立っているのです。
私は母親にその不自然にたっている木の理由を聞きました。
邪魔にして切ろうとすると、不幸なことが起こるのだそうです。
私はとても恐ろしかったことを覚えています
それから私は決してその木をとても怖く近づきませんでした。
青々とした枝ぶりは冬に枯れ、無数の枝をむき出しにしていることでしょうが、私はおそろしかったのでしょう。坂道のふもとから青々とした枝を誇らしげに、風にそよがせている一度きりの光景しか記憶にありません。
冬を迎えました、雪がやたら降る町でした、10月からちらちらと降り始めます。
景色が真っ白になるのを待ちわびました。
毎日両親に、いつ、雪が積もるのかを聞きました。
もうすぐ、と、いつもこたえるので、もうすぐはいつのことかと思いました。
とても長くおもい、早く、早く、と、思いました。
ある目が覚めると、布団のそとがとてもつめたく感じました。
、いつも眺めている刷りガラスから差し込む光が、昨日より明るく感じました。
布団を跳ね上げ、刷りガラスを背伸びをしてあけました。
真っ白く、薄く雪が積もっていました。
私はうれしくなって、母親につなぎを出してもらい、着替えてボッコ手袋をはめました。
ボッコ手袋とというのは子供があそんでなくさないよう左右の手袋が紐でつないであり、
上着の袖を通して、はめるものです。
一年ぶりの雪遊び着に着替え、手袋で雪を救い上げました。
じっとりとして真冬のさらさらとした雪ではありません、両手で硬く結ぶとカチカチに丸まりました
、そして、土がついてところどころ茶色く汚れた雪球になりましたが、とても満足でした。
暖かくなり、雪がとけ、夜になると降り、繰り返していくと、救い上げる雪も少しづつさらさらになり、土もつかなく真っ白ないびつな雪球になりました。
吹雪く日も何度となくありました。
なんどめかの吹雪いた日、暇をもてあました私はつなぎと手袋をはめ、裏山にのぼりました。
裏山の斜面は吹雪つもった雪で汚れもなく真っ白で、うすぐもりの太陽を反射して、
まるで一面の壁のようでした。
私は真っ白な壁面に足をさしこみ、さしこみ、上っていきました。
なんども雪に足がとられ、長靴が抜けなくなりそうで、無理やりひっこぬくとすきまから雪が入りぬれていきました。
ほんのわずかな斜面でしょうから大人からみればなんでもないみちのりでしょうが、その頃の私には何千メートルの山を登っているような感覚でした。
顔を解けた雪でぬらし、雪をつかみながら上っていたので手袋も指先が凍えていました。
頂上につきました、もちろんやまのてっぺんではなく、もっと先に高い山がありますが、
私には頂上でした。
さきにはもう幾年かすると通うことになる、小学校のグランウンドがありました、
平たく雪に埋もれており、その先に、木造の校舎が建っていました。
グラウンドに沿った斜面をさらに先に進みました。
何度もグラウンドに向かって転げそうになりました。
吹雪が真正面から吹き付けてくるので、とても冷たく顔をしかめて進みました。
なんどめかの足とられ転げそうになったとき、そのまま片足を滑らせて斜面に真横に倒れました、雪を顔いっぱいにつけたまま、起き上がり吹き付ける吹雪を先をみると視界の中心から
雪が飛び出してくるように見え、テレビでみた、そこにきっと雪女がいるような気がしました。
私は怖くはなかったような気がします。きっといるような気がしていました。
作品名:吹雪 作家名:北野