耳たぶチャッカマン
僕たちは、だいぶ暗くなった道をゆらゆらと歩いている。僕の左手には、ついぞ燃えることのなかった線香花火が握られていた。紙縒り状のそれを弄びながら、斜め前を歩く先輩についていく。
「このぐらいの時間が丁度いいと思います」
花火をするなら、そう僕は呟いていた。振り返る先輩は、笑顔で頷いた。
「早く帰りましょう」
自然と僕たちは手を繋いでいて、僕はいつもと変わらないなと思っていたら、先輩はそおっと、けれどもぎゅうっと、握りなおしていた。
「最後の一本は、今度にしましょ」
それを聞いた僕は、両方の手を握り締めた。
END