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ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─

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さよなら、みゆきちゃん


  
としはる君は、後にしようとしている星空家の住所は知っていました。
日曜の朝に発つと聞いてましたが、どれだけ早朝かまでは聞いてはいません。
もしかしたら間に合わないんじゃないかと焦って自転車をこぎます。
7時ちょっと前に星空家に到着するくらいに来てみましたが無事に間に合ったようです。

引越しの荷物のほとんどはセンターで、最低限の荷物を車のトランクに乗せているところです。
近所の人たちも見送りに来ていて、クラスメートの女子も3人ほどいます。

その中に、、、意外にも、ふみえちゃんの姿がありませんでした。
一番の親友が何故? と考える暇もなく、としはる君はみゆきちゃんの名を呼びつけます。

「としはる君!? こんな所にまで、見送りに来てくれるなんて!」
驚くみゆきちゃんの背後越しに、優しそうなお父さんとお母さんがとしはる君を見つめました。

女の子の見送りに来る事じたい恥ずかしいというのに、親の前というのも拍車がかかります。
それでも………やっぱり、最後は面と向かって言っておきたい事があるんだと気を奮い起こします。

「みゆき。ほら、コレ」
体裁を取り繕うように、みゆきちゃんに差し出したのは借りっぱなしだった童話辞典です。

「あっ…」
どうやら貸したみゆきちゃん本人も忘れてしまってたようでした。

「…ったく。お前の大事な本なんだろう? 忘れるなんてヘマするなよ。あ、俺もか」
「あはははは!そうだったね、ゴメンゴメーン」

最後まで魅惑の笑顔で笑いながら、差し出された本をみゆきちゃんは受け取ろうとして……。

………大事な本?

ふと、としはる君の記憶にビビッとほとばしる何かが引っかかり、すぐに思い出しました。



…………………………
…………………
…………

意中の子の大事にしている本にはね、魔法が宿るの。

その魔法の力と本の持ち主の気持ちは気付かずに直結してるらしいのよ。

それでね。どんな紙切れでもいい。この場合は「しおり」がいいわ。

自分の名前を書いて、星空に向かって願う事で自分の分身が出来上がるの。

そこで、本の魔法の力に自分の分身を取り込ませる事で、持ち主の気持ちに貴方が存在する。

つまり、意中の子と両想いになれるっておまじないよ。

簡単に言えばその本に分身である「しおり」をはさんでおけばいいって事。

…………
…………………
…………………………



そういえば。。。
バカみたく「田牧としはる」とでっかく書かれた「しおり」…挟んだままだったぁぁあ!!


ぶあっ!と全身から冷や汗が吹き出た時すでに遅し、みゆきちゃんは本を受け取った後でした。



ちょ、ちょっと待ってくれ!! 今日はただ「ありがとう」を言いたくて来ただけであって、

俺の本心をバラすつもりなんか毛頭ないというのに、、、この展開は、まずーーーーーーい!!




みゆきちゃんも、クラスメートも年頃の女の子です。
実際、みんなあの「おまじない」の事は知っているのです。



しおりにわざわざ名前を書いておく神経質な人間はいないですよね。
今度こそ取り繕うすべもない気がします。

こうなったら実力行使だ。返したその本を取り上げるしか…!



としはる君の顔が、ひどい形相の表情へと変化しかけたその時。

みゆきちゃんは本を開くことなく、笑顔で信じられない事を言い放つのです。












「ありがとう。でも、この本はわたしのじゃないの」
















…………………………………………………………………………
…………………………………………………………
………………………………………
…………………………
………………

……え?



ある意味ひどい形相。間の抜けたような顔のとしはる君をよそに、
星空家の玄関から出てきたふみえちゃんに、みゆきちゃんは駆け寄って行きます。

「こんな時に失礼にも、お手洗い貸していただいてありがとうござ…」
「ふみえちゃん!! はい、コレ!」

童話辞典を差し出されたふみえちゃんは、あり得ないはずの物を見るように受け取ります。
そして、その真相を確かめるべく辺りを見回すと、としはる君の姿を見つけたのです。

すると、どうでしょう。

口を開かなければ、物静かで表情の変化をなかなか見せないはずの、
ふみえちゃんの顔がみるみると赤くなっていくではありませんか。


「みゆき、そろそろ出発だ。車に乗りなー」
みゆきちゃんのお父さんが、空気も読まずに事を進めようとします。

星空夫妻が深々と挨拶を、みゆきちゃんも友人一同に軽く手を振ってから車に乗り込みます。
事を理解していない他のクラスメートは、手を振り返してはいるのですが、
としはる君とふみえちゃんだけは、呆然と立ち尽くしてしまってるのにお構いなしのようです。

最後にピョコンッ!と車の後部席の窓から首を出してくるみゆきちゃん。


「としはる君、一昨日の約束を忘れないでね!」

「……え?」

「超さびしがり屋のふみえちゃんの事よろしくね!バイバイ、また会おうねー!!!」


出発して動き出した車からぶんぶか手を振り続けるみゆきちゃんが遠ざかっていく。
しまいには、車のドアのフレームに頭をぶつけて、痛々しそうに頭を抑えていくドジな姿が焼きつきました。


さようなら。そしてありがとう、星空みゆきちゃん。
また会う日まで!


…………………という感動的な流れが常識な世の中ではございますが。
立ち尽くす幼馴染の2人だけが、そんな常識を逸しているなどとは誰も気付く事はありません。
言わずもがな、星空みゆきちゃんにもです。

しばらくして、2人は少し気持ちの整理をつける事にしました。

「あの子ったら…。それに、としはる。どうして貴方がここにいるのよ…?」
ふみえちゃんは、いつの間にか目頭を熱くさせながらも火照った顔はまだ冷え切らぬといった様子です。

「………………え? そ、それはまぁ…なんていうか………」
としはる君は、ふみえちゃんのそんな表情を見ると、整理しかかった気持ちがまた崩れてしまったかのようでした。