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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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さくら女子高校(4)

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夏休みが終わった2学期に大森うららのクラスに転校生が入った。
鈴木由紀という名前である。鈴木由紀は車椅子での生活であった。
本来なら転校は許可されないのだが、特別に許可されることになった。
夏休み中にトイレのスロープの工事や手すりの工事がされた。
いざ鈴木由紀が学校に来て見ると予想外に生徒の手を借りることとなった。
エレベーターの設備までは予算が無く、階段はどうしても生徒の助けを必要とした。
初めのうちは誰もが喜んでそのことをやっていた。
車椅子を階段から上がり降りするには2人がいなくてはならない。
彼女のために1年2組の教室は1階になった。ただ音楽の授業だけは2階まで移動しなくてはならなかった。
その日に車椅子を運んだ生徒の一人が足を滑らし、車椅子が階段2段ほど滑り落ちた。
幸い誰も怪我はしなかった。
「気をつけなさいよ」
「しかたないでしょう」
車椅子を運んでいた生徒同士が口論になった。
それを聞いていた鈴木由紀が泣き出した。
調度そこに山崎が通りかかった。
「どうしたのだ」
3人とも黙ったままだ。
「授業が始まるぞ」
「先生お願いします」
階段から滑り落ちそうになった生徒が言った。
何しろ階段の途中でのことである。
山崎は車椅子の両輪をもち、一人で鈴木由紀を2階まで運んだ。
「先生授業出たくありません」
鈴木由紀は泣き声で言った。
「ここまで来たんだ頑張れ」
後は鈴木由紀は音楽室に行こうと思えば行ける。
鈴木由紀は車椅子を動かそうとしない。
ピアノの音が聞こえて来た。

その日を境にいつも鈴木由紀に付添う生徒が2人いた。
一人は大森うららである。もう1人は河内博美。
此の2人の生徒は卒業するまで鈴木の友達であった。クラス替えもあったが、授業が終わるのは同じであり二人は鈴木由紀のクラスに行ってくれた。
山崎は一度校長に進言した。
「大森、河内に何か表彰出来ないですか」
「表彰しない事が彼女たちの誇りになるだろう」
鈴木由紀はテストケースであったのかもしれない。
その後鈴木由紀の様な生徒は在籍しなかった。
大森、河内は大学を卒業後教育関係の職に就いたと山崎は知った。