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こんなケースもありました。

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殺人は罪だ。人を殺せば、それ相応に償わなければならない。では人を生き返らせたら、それは罪になるのだろうか。それを考えてみよう。
 昨今、医学の発達はめまぐるしいものがある。「まさかそんなことまで!」というような技術が専門家の手によって開発されている。すると私たちはこう考えざるを得ない。
「近い将来、死んだ人を生き返らせる医学が発見されるのではないか?」
 しかも大掛かりな手術などせずに、注射一本でポンと生き返ってしまうのだ。そんな世の中にいつかなるかもしれない。するとどういうことが起こるのか。
 これは私がタイムマシーンで未来に行き、実際に見てきた一例である。
 
 鈴木さんちのおじいさんは九十九歳。この年までそれはそれは元気に農作業をしていたが、最近家で転んだことがキッカケで寝たきりになってしまった。
 しかし、おじいさんはおばあさんにこう言った。
「ばあさん、ワシゃあもう九十九じゃ。この世でやれることはすべてやった。こうなったのもきっとあの世からお呼びがかかっている証拠に違いない。ワシはこれからの世代にこの世を託したい。ばあさん、ありがとう。愛していたよ……。ポックリ」
 おじいさんは、この言葉を最後に目を閉じた。ところがおばあさんは納得しなかった。死体に覆いかぶさり、わんわん泣いたのだ。
「おじいさんおじいさん、死なないでおくれ。わたしはあんたがいなけりゃ生きていけないんだよ。生き返っておくれよ。お願いだ。生き返っておくれ」
 その時である。
 おばあさんは何やら怪しげな物をタンスの引き出しから出してきた。それはインターネットの通販で買った、人を生き返らせる魔法の新薬『おかえり薬』である。
 おかえり薬はすでに注射器にセットされてある。後は死体にぶっすりと打つだけだ。おばあさんは迷うことなくぶっすり打った。おじいさんの死体に遠慮なく打った。
 するとおじいさんはパチリと目を醒まし、おばあさんを見た。
「ばあさん、何をした……」
「いえ、何も?」
 シラを切るおばあさんをじい~と見つめた後、おじいさんはまたこう言った。
「ここはあの世か?」
「まあ、どっちでもいいじゃありませんか。それよりお饅頭でも食べませんか?」
 おじいさんは頭を爆発させた。
「食べませんわ――――! お前、おかえり薬打ったじゃろう! なんじゃ、このリアルな感覚は! ワシゃあ最後に『ポックリ』と言ったじゃろうが! あれがワシの最後なんじゃあ――――!」
 その叫びを聞いて、おばあさんは涙目になった。
「おじいさん、わたしはおじいさんに死んでほしくなくて……。だからつい魔がさして……」
「これほど『魔がさす』という表現が似合うことはないわ! ええい、裁判じゃあ―――! 受けてたて―――い!」
 激怒したおじいさんを見て、おばあさんは怒った。
「ああ、そうですかそうですか! あんたなんか、最初から死んどけばよかったのよ! 裁判でも何でもおやりなさい!」
 その数日後、二人は法廷に立った。そして裁判官はこう判決を下したのだ。
「被告、鈴木ハナコ。やっちゃったね。ついにやっちゃったね。被害者、鈴木ヒロシをこの世に蘇らせちゃった罪で……」
 集まった家族は息を呑んだ。
「罪で……?」
「鈴木ヒロシは死刑――――!」
「ワシか――――!」
 そう。おじいさんは死刑に決まったのである。その瞬間、おばあさんは安堵した。
「おじいさん、これでやっとあの世に逝けますね。わたし、ほっとしました」
「やっと? ほっと? どの口がそう言うか!」
 穏やかな顔でにっこり笑ったおばあさんを家族が励ました。
「おばあちゃん、よかったね~。これでもうストレスから開放されるんじゃない?」
「誰がストレスじゃあ――――!」
 おじいさんは拳を上げてまたもや激怒した。

 死刑当日。おじいさんの目の前には首吊り縄が用意されていた。おじいさんは台の上に立っている。
「あのう……。ちょっとお尋ねしますがね。ワシ、本当にこれで死ななきゃいかんの?」
 死刑執行人は軽い口調でこう答えた。
「まっね~」
「まっね~、じゃないわ」
 どうやらおじいさんは諦めたようだった。と、そこへおばあさんが突然駆け込んできた。
「おじいさん、さようなら! 今度はあの世でお会いしましょう! おじいさん、私を愛してる? まだ愛していますか!」
 おじいさんは黙って下を向いた。そしてゆっくりと顔を上げた。
「仕方がないのう……。ばあさん、ワシはお前を……」
「はいはいはいはい、もうさっさとやってくんない?」
 執行人はささっと手早くおじいさんの首にロープをかけた。
「はい、よいしょー!」
 ドーン!
「ぐへえええ!」
 おじいさんは死んだ。最後まで言えずに死んだ。おばあさんはそういう時のために持ってきていたおかえり薬をおじいさんに打った。
「で、おじいさん、何て?」
「愛しとらんわ―――! このクソバアアが―――!」

 現代に帰ってきて私は思いました。まあ要するに何でも使いようだな、と。生き返らせ薬が出来た時代の皆さん、乱用してはいけませんよ。
え、なんですって? おお、今ニュースでやってます。もう出来ちゃったんですって。まあ大変。