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長谷川貴志
長谷川貴志
novelistID. 38438
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パワプロ

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最近彼女はパワプロにはまってるみたい。それもスーファミの。本体を持ってきて「一緒にやろう」って。二人こたつに入って寝転がりながらやり始めた。うちは貧乏だからテレビがある居間は狭いしすぐ横にはお母さんが寝てる。なるべく起こさないようにそーっとそーっと。音量も低めに設定した。最初のうちはまあ和気あいあいと。無言だけど。でもやってくうち僕も負けたくない。子供の頃よくやってたし。彼女もかなりやり込んでるだけあって負けたくないのが見て分かる。とにかくお互い負けられない戦いがここにあった、というわけです。でもやはり子供の頃にやってた強みか終始僕の方がリード。一点差まで詰め寄られたけど。フォークボール投げて空振り。「あ、これ7回で終わりなんだ」と言って彼女を見ると悔しさをにじませる表情。「ずるーい」「別にずるくないよー」無性に彼女を抱きしめたくなってピンクのセーターに顔をうずめた。ごそごそ。ごそごそ。その気配を察知してかお母さんが起きてしまった。「もう、そんなことやってないで、早く寝なさい」「はーい」二人で声を合わせて答えた。僕だけ立ち上がり隣の部屋へ。敷いてある布団に潜り込んだ。彼女はというとよほど悔しかったのかまた一人でパワプロやり始めてるようだ。襖の隙間から光が洩れてる。隣の部屋では僕の大好きな彼女がゲームをしてる。僕は自然と顔が綻ぶ。そんな夜だった。

作品名:パワプロ 作家名:長谷川貴志