小さな妨害者
なぜなら僕はユリウスのことがとても好きだから。
ユリウスもそのことを知っている。
なぜならユリウスも僕のことが好きだから。
でも周りの人たちはそのことを知らない。
なぜなら僕がユリウスのことが好きで、ユリウスも僕のことも好きだということを知られてしまったら、どうなってしまうか分からないからだ。
下手すれば、学校も退学になってしまうかもしれない。
だから、僕もユリウスも相手に抱いている感情を僕ら以外の誰にも言わない。
「リヒャルト兄ちゃーん!」
と、向こうの方から弟のマルクスの声がした。
しかし僕は気付かないふりをして、ゲームを続ける。
「リヒャルト兄ちゃーん、遊ぼうよー!」
全くもう、どうしてこういうときに限って邪魔をするかなあ……。
「ユリウス、ちょっといい?」
僕はユリウスに尋ねる。
「いいけど」
「ごめんね。ちょっとだけ待ってね」
そう言って僕はゲームをポーズ状態にする。
「マルクス、僕たち今いいところなんだから邪魔しないで。後でね。いい?」
「えー……今日はリヒャルト兄ちゃんユリウスと遊んでばっかりでつまんないよー。遊んで遊んでー!」
マルクスはだだをこねて言う。
「君と僕は一緒の家に住んでいるんだから、いつでも遊べるでしょ? でも、ユリウスとはいつでも遊べるという訳ではないんだ。だから、我慢して。いい?」
「嫌だ嫌だー! 遊んでよー!」
マルクスはまただだをこねて言う。
「弱ったなあ……」
「なら、マルクスも一緒にゲームすればどう?」
ユリウスが言う。
でも、そうするとユリウスと二人きりでゲームできないんだよなあ……。
「いいの?」
「いいよ。三人のほうがにぎやかで楽しいと思うし」
確かにそうかもしれないけど、僕はユリウスと二人でいる方が楽しい。
「そうだね。マルクス、それでもいい?」
これ以上マルクスが何か問題を起こしたら嫌なので、仕方なく僕はそう言う。
「うん。ユリウス、よろしくね」
「こちらこそ」
その後僕たちは三人でゲームをした。
そのうちマルクスはゲームに飽きてどこかに行ってしまうだろうと思ったけれど、今日はそんな予想は外れてユリウスが帰るまで一緒にいた。
はあ……今日はユリウスとひさしぶりに二人きりでゲームをしたりできると思ったのに、とんだ災難だった。
また明日、学校で話せばいいか。
うん、そうしよう。