「レイコの青春」 16~18
1985年に起こった、大韓航空機爆破未遂事件の犯人、
金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚に、日本語を教えた女性、
李恩恵(リ・ウネ)の似顔絵が、田口さんに酷似していることから
再び世間が騒然となります。
会話内容などからも、田口さんの失踪当時の状況と良く似ていることから、
北朝鮮に拉致されたことが、ついに発覚をします。
この拉致事件とともに、
この当時に大きな注目を集めたのが
頻繁に取り上げられた「ベビーホテル」という存在です。
ベビーホテルとは、無認可保育所の一つです。
ビルの一室などで子どもの一時預かりをしている、商業的な
施設のことを指しています。
保護者とは個別に契約をして、夜間遅くまで預かったり、
24時間の保育を実施している所などもあります。
しかしこうしたベビーホテルの急増が、
一方で、乳幼児たちの頻発な死傷事故を生みだしました。
1970年代から80年代にかけては、
これが大きな社会問題にもなります。
夜間に働く保護者が利用しているケースなどが多く、
松山市で発生した認可外保育施設での、乳児死亡事故を一つの契機として、
ベビーホテル問題が、国会でもしばしば取り上げられるようになります。
1980(昭和55年)に行われた実態調査では、
全国には、500ヶ所のベビーホテルが存在し、
その大半が劣悪な環境のもとに、
保育が行われていたことが明らかになりました。
こうしたことから1981(昭和56)年に、
児童福祉法の一部が改正されました。
従来から指導や監督の権限がおよばなかった無認可保育施設へも、
行政による指導監督権が、行使できるように改正がされました。
また「無認可保育施設に対する当面の指導基準」
があらためて定められました。
それらの効果の甲斐もあって、以前のような劣悪な保育施設は
ほとんどなくなったと言われています。
ベビーホテルという呼び名は、
これらの一連の出来事が社会問題となったころにつけられた名前で、
今日では、そのように名乗っているところはほとんどありません。
この頃に、乳幼児施設やベビーホテル等で相次いで
深刻な事故や事件が続いたために、日本弁護士会では事態を懸念して、
以下のような声明を発表しました。
作品名:「レイコの青春」 16~18 作家名:落合順平