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ハイル、アンダーソン!

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ドイツからアンダーソンさんが打ち合わせの為に来日しました。
例によって、僕は通訳。空港で初めて会ったとき、アンダーソンさんは、

「ハジメマシテ、ワタシノナマエハ、アンダーソンデス」

と、決して流暢ではないが、親しみのある日本語で挨拶をしてきたのです。聞け
ば彼は大の日本びいきで、なんでも小学生の時に見た、「ブルースリー」に憧れ
て、日本のことを勉強したのだとか・・・

今は、「ブルースリー」が日本人でない事は知っていましたが、彼がその事を知
ったときには、もう後戻りできないほど、日本にはまっていたのです。ひらがな
だけは全て読めると自慢した彼は、バスの中で前方に流れる電光掲示板の文字の
うち、漢字を全て飛ばして、ひらがなだけを

「・・は、・・を・・です。 ・・・によって」

と、電光掲示板が流れるスピードにあわせて大きな声で読み上げ、周りの日本人
が何事かと彼を振り返るその視線をものともせず、

「ドウデスカ、スゴイデショウ」

と言わんばかりの「どや顔」で僕を見るのでした。
もう、苦笑するしかありません。

バスを降りると、この冬一番の寒波到来とかで、雪がちらついています。

It's very cold tonight, isn't it?
(今夜はとても寒いですね。)

と彼に話しかけると、

What do you say 'cold' in Japanese?
(寒いって日本語でなんていうの?)

と聞いてきたので、

「さむい」

と教えてあげると、

「サムイ、サムイ・・・・サムイデス」

と何度も復誦して頭に叩き込んでいました。

ホテルのロビーで、次の日の朝食を一緒に食べる事を約束して、それぞれの部屋
へ。次の日、朝食を食べにレストランへ行くと、彼が浮かない顔でやってきまし
た。

「昨日はよく眠れましたか?」

と聞くと、良くは眠れたが、朝、シャワーが水しか出なくて、フロントに電話し
たけど意味が通じなかったというのです。話を聞くと、事の顛末はこうです。

早起きした彼は、熱いシャワーを浴びようと、蛇口をひねったものの、冷たい水
しかでない。そこで、フロントにクレームを入れようと思ったのですが、せっか
く日本に来たのだから、日本語でしゃべろうと考えたようです。

冷たいは、昨日教わった「サムイ」という言葉だし、次はシャワーだけど・・・
ふと、ウォシュレット付きトイレのボタンを見ると、英語表記で、「Shower」と
書いてあり、その表記の上にはひらがなで、「おしり」と書いてありました。

Oh! I got it!!
(よし!わかったぞ)

彼は、「シャワー」は日本語では「オシリ」と言うのだと理解したのでした。

喜び勇んで、フロントに電話し、

「オシリ、トテモ、サムイデス」

とのたまったのでした。

その話をTKG(たまご掛けごはん)をかき込みながら聞いていた僕は、思わず
鼻からごはんを吹き出してしまいました。

Shower is very cold.
(シャワーがとても冷たいです)
と言いたかったのね。

フロントのお姉さんも、さぞかしびっくりしたでしょう。

アンダーソンさん。あなた、面白すぎます!!


作品名:ハイル、アンダーソン! 作家名:ohmysky