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佐崎 三郎
佐崎 三郎
novelistID. 27916
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『リヴァプール巡礼①』

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『リヴァプール巡礼①』

3月にイギリスのリパプールへ行ったのは、40年もファンとして思い続けた総決算だった。そう、THE BEATLESである。四日間、滞在した。そして自分の足で歩いた。語りたいことはたくさんあるが、つい今朝のニュースを観て驚いた。一生懸命歩いて辿りついたリンゴ・スターの生家が取り壊されるという。ジョンとポールの家は保存管理会社が持っていて観光地になっている。ジョージとリンゴの家はそうではなかった。しかし、わたしは自分の足で歩いたとき、正直感動した。

リンゴのアルバム『センチメンタル・ジャーニー』のジャケットの建物(今でも営業しているPUB)があるというのは、リリー・フランキー氏の本でも紹介されていたので、是非とも行きたかった。そこで、歌にもあるペニー・レーンのラウンド・アバウトから簡易な地図を頼りに歩いていった。途中、不安になってガソリンスタンドのコンビニ「SUPER」で道を訊き、またバス停にいた女性にストリートの名前を尋ね、教えてもらい、人気のない大通りに建つそのパブは確かにあった。

その裏に立ち並ぶ「長屋」風な住宅の中にリンゴの生家はある。現在誰かが住んでいるので、余りキョロキョロできないが、一枚だけ写真を撮らせてもらった。その家が取り壊されるというのだ。確かにその辺りは再開発の対象であり、見渡せば窓に板が貼られた家並みが多かった。仕方がないと言えばそうかとも思う。ただ、わたしのような人間は世界中に数多いと思う。ビートルズ巡礼の旅ができなくなる、そう思うのだ。

ジョージの家もいつの日かそうなってしまうのかも知れない。冷たい風に吹く、ペニー・レーンから歩いたあの日のあの時間のあの道を思い出し、胸騒ぎで、心が落ち着かない自分に気づくのだった。